トップページ > あまのがわ通信 > 2012年7月号 不思議なオリオンを支える裏方 〜支え、支えられて〜

不思議なオリオンを支える裏方 〜支え、支えられて〜【2012.07】
特別養護老人ホーム 平野 咲野香

  ユニットオリオンで私の立場は「怖い姉さん」になっている。自分ではまったくそんな気はなかったのだが、いつの間にかそうなってしまった。それは利用者さんにも伝わり、「あの娘小さいのに力強いのよー。勝てないんだから」とか「偉くなって、乱暴だけっけもんな」などと言われてしまう。
私がこのユニットに来て2年が経つ。その間にリーダーが3人代わり、私は一番古株になってしまった。そうなると、自然に新人が来る度に教える立場になり、熱心に教えれば教えるほど、自分のきつい性格もあり、怖い人と見られるようになり、スタッフから「姉さん」とあだ名されるようになった。
 私は、完璧主義でそれを他人にも求めるところがあるからか、神経質な性格のゆえか、気持ちが顔に出やすいのか、いわゆる『普通の人』になぜか受け入れてもらえず、これまで嫌な目にたくさん合い、傷ついてきた。そんな不思議な私を銀河の里のスタッフは、変に受け取ることもせず、ましていじめることなど全くなく受け入れてくれた。
 私が、ユニットに入っただけでピリッとした空気になるし、私がいるだけでビビるスタッフもいる。それでも私のことを嫌いじゃないと受け入れてくれる。本来なら反発してもおかしくないような状況でも話しを聞いてくれる。そして何より、利用者さんとの関係の中で、鬼が出てくる私を受け入れてくれる利用者さんの懐の大きさに、いつも私の方が支えられてきたと思う。
 銀河の里では、利用者さんの気持ちに依り添った繊細な支援を目指しているのだが、そのためにも、他の施設がやっているような管理は基本的に達成されていなければならないと私は思っている。それが出来ることが前提で、いろいろと出掛けることができたり、おいしいものを食べに行ったり、楽しいことがたくさんできる。だが、体調管理が不十分で脱水になったり、褥瘡、便秘、転倒その他もろもろの事が出てくると、楽しいことどころではなくなり、医療管理に追いかけられることになってしまう。
 私は、3つのことを大事に考え、心がけてきた。それは「守り」「場をつくること」「作業」だ。「守り」とは大げさにいえば利用者さんの命を守ること。誤飲、誤嚥、転倒などの事故が起きないように見守り、体調管理もきちんとする。「場をつくる」は利用者さんが過ごしやすい雰囲気をつくること。スタッフと 利用者さんのやりとりを見守るのもポイントの一つだ。「作業」は日常生活を過ごすための家事などの仕事。だが、これらを完全にこなすことは難しく、常にユニット全ての利用者さん、スタッフにアンテナを張っていなければならず、その中で、自分はどう動けばいいかを瞬時に判断して動き、場の雰囲気を守りながらやっていかなければならない。その上で大量の作業はテキパキとこなしていく必要がある。とても神経と体力を使う仕事だ。  
 それをユニットのスタッフとチームを組んでやっていくのだが、スタッフのレベルが低いと極端に質が落ちてしまいやすいのも事実だ。高いレベルで質を保つのはスタッフで決まると思うので、どこか自分なりに必死になって、他にも求めてしまう。そんな感じで頑張っているうちに、私は自然に怖がられるようになってしまったと思う。決して怖いのを好きでやっているわけではない。
  オリオンの前リーダーであった三浦君は、私とひとまわり以上も年齢が若かったこともあって、私もオニ全開で厳しく接したかもしれない彼は悩みながらも、踏ん張って、驚くぐらい成長していくのが解った。若い人の力は本当にスゴイ。三浦君とは当初はぎくしゃくしたこともあったが、今は他のユニットのリーダーとして、また新たな課題に挑戦している。今でも、相談をしてくれたりするので嬉しい。オニ全開の私だが、そんな私を慕い頼りにしてくれる人もいるのでありがたい。
  ユニットオリオンは、別名「オニオン」と呼ばれるくらい、アクの強い利用者さんばかりで、スタッフもそれに負けないくらい強い気持ちでないと勤まらない。なので、利用者さん同士で徒党を組むようなことはない代わりに「自分は自分、人のことなんて知らない」という、我が道を行く感じの利用者さんが多い。ケンカや言い争いが絶えることはなく、いつも大荒れで事が起こってくる。スタッフは「今日もやっているな」「元気がいいな」と起こってくるもめ事も、それそのものが人生だと味わい楽しんでいる。
 私はスタッフを支える立場になっているが、本当は利用者さんと一緒に楽しみたい気持ちが強い。スタッフそれぞれに気になる利用者さんがいるし、やりたいと思うことも出てきているのでそれを実現していきたい。
  銀河の里は指示管理的な組織ではなく、現場のスタッフのそれぞれの思いがチームワークで動いて、それが支えられていくという感じがある。そういう意味では、今のオリオンは、どこかまとまっているというか、雰囲気ができているように思う。この感じを私はフォローしたりサポートしながら、楽しんでいきたいと思う。
 
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