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盛り上げと見守りに支えられて【2012.02】
特別養護老人ホーム 高橋 育美

 毎月ショートステイにやってくるユリさん(仮名)。いつも素敵な洋服を着て、お化粧も髪型もばっちり。華やかで粋なところもあって、恋の狩人と言った感じだ。「優しい男を選ばなきゃダメよ、でもただ優しいだけでもダメなの」とアドバイスをくれたり・・・異界と現実を行き来している利用者さんが多い銀河の里では珍しい、超現実派(?)の利用者さんである。場を切り盛りするのがうまく、みんなを巻き込みつつも自分も楽しむという感じで、地域の婦人部などで活躍していたのもうなづける。
 私は料理やお菓子作りが大好きで、何度かイベントとして計画してきたのだが不完全燃焼気味だった。みんなを巻き込めず、結局1人で作業をやってしまい「一緒にやった!」という雰囲気にならず、食べてもらうだけになってしまった・・・。しかしユリさんはそんな私を支えてくれる。ユリさんとなら「みんなで一緒に」ができるかも知れない・・・そこで少し早めだがバレンタインのチョコレート作りに挑んだ。
 入浴中に「バレンタインにちょっと早いけど、ユリさん、一緒に作らない?」と誘うと、「見てるだけになるかもしれないけど・・・あとで作戦会議しましょ!」と背中を押してくれた。その直後「作戦会議しなくちゃ♪」とユリさんはメモとペンを持ってきて、計画を立ててくれたフキさんはそんな私たちの様子を見守ってくれていて、ユニットの中心的な存在になっている。フキさんも誘うと「いやだ〜!でも食べるだけならいくらでも手伝う♪」とジョークでかえしながら、眼差しは優しく応援をしてくれていた。 ユリさんとラッピングを選びに買い物にでかけた。「育美ちゃんに任せるわよ〜」と遠慮がちだったが、いざデパートに着くと「やっぱりハートがいいんじゃない?」「女の子にも渡すんだもん、ピンクがかわいいよね〜」と、しっかり選んでくれた。ついでにバレンタインフェアで並ん だチョコレートを「せっかくだから息子に1つと・・・本命君用に1つ買って行こうかしら」と二箱買った。銀河の里の他に利用しているデイサービスにしっかり本命がいるとのことで、さすがユリさん、という感じだった。
 チョコ作りは作戦会議の結果合計25人分という量に膨らんた。作業が始まるとさすがのユリさんで、テキパキと材料を混ぜてくれた。隣のユニットから祥子さん(仮名)も「肩いたい〜!」といいつつ大量のチョコレートを刻んでくれ、チョコ好きなクニエさん(仮名)も見ていてくれた(チョコレートに夢中になりすぎてお昼ご飯がさっぱり進まなかったが・・・)そのうちユニットにチョコレートの甘い香りが広がった。甘い香りに誘われて、隣のユニットの利用者さんも集まってきて、まさにバレンタインなリビングになった。
 ラッピング作業を、ユリさんと私がしていると、みんなが取り囲んで見ていた。かわいい袋が出来あがるたびに歓声があがった。ラッピングが終わり、いよいよ「1人1人に渡しに行こう!」とユリさんを誘うと「え〜っ、いいわよ、恥ずかしい!」と言ったくせに、かなり積極的に「はい、いつもありがとう。頑張ったから食べてね〜」としっかり渡していた。フキさんも「はい、どうもありがとう。」と受け取ってくれ、「今日のとってもおいしかったよ〜!がんばったがんばった。これからも美味しいの、頼むよ!」と声をかけてくれた。ユリさんも「今日はどうもね〜、またやりましょう!今度は手料理でも」と、次の話しをしてくれた。
 乗りよく一緒にやってくれるユリさんと、それをいつも見守ってくれているフキさん。二人の存在は、今の私にとってとても大きい。新卒で働き始めた初年度は、いろいろ悩んでグルグルしていた自分だったが、今は「次は何をしようかな・・・」と楽しみが増えてきている。まだ自分からまわりを盛り上げる力はないが、ユリさんとフキさんの2人に支えられながら、これからもお菓子作りや料理で楽しんでいきたいと思う。
 
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