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今年の夏祭り【2011.08】

デイサービス 米澤 里美

 灼熱の太陽、外にいるだけで汗がふきでるような暑さの中、今年の夏祭りは行われた。今年は、花巻中学校ブラバン演奏、銀河さんさ隊によるさんさ踊り、ゲストバンドのTAYUTAライブ、輪踊り、バザー、ワークステージ屋台、手作り甘味屋「里や」、もちつき、復興支援ブースなど盛りだくさんで、会場は熱気に包まれた。今年は売り上げのすべてを震災の復興支援活動資金とすることとして、スタッフの意気込みや雰囲気がいつもとひと味違うように感じられた。
 私は、銀河さんさ隊の笛と「里や」の担当となり、両方とも初めての挑戦。銀河さんさ隊では、今までやってきたフルートとは違う横笛に挑戦した。ディサービスでは、今年初めて太鼓を挑戦する齋藤さん、踊りに挑戦する太田代さんがいるので、昼食前やお昼寝後は、さんさ踊りや輪踊りが始まり、賑やかなディサービスとなった。
 やっと笛のメロディを覚えて、太鼓と合わせてみる。♪ダンコンダダスコダン♪ピ〜ヒョロロ〜♪と太鼓と笛が鳴り、「サッコラチョイワヤッセェ〜♪」と太田代さんのかけ声が響くと利用者さんも乗ってくる。「いいぞ〜!もっとやれぇ!」と和代さん(仮名)が声援をくれる。車イスのニシさん(仮名)も手を舞わせて踊ってくれる。さんさ踊りのリズムに、祭り気分が盛り上がる。音を聞きつけて、隣のグループホームの皆さんがディホールに遊びに来てくれるこの感じがとてもいい。みんなで輪になってスタッフも利用者も関係なく踊る感じがとても楽しかった。
 そして、「里や」。利用者さんと一緒に作る日頃食べているおやつを販売しよう、というのが「里や」だ。今年はメロンパン、かりんとう、パウンドケーキ、甘酒プリン、がんづき、ヘルシーチーズケーキを出品することにした。料理苦手系のスタッフがなぜか「里や」担当に集中してしまい、試作会では、「パウンドケーキぼそぼそ!」「がんづきしょっぱ〜い!味噌入れすぎ!」「チーズケーキ、味・・ないよ。」とさんざんだった。でも、その試作に作るところから食べるところまで(15時のおやつ)利用者さんは付き合ってくれて、本当にありがたかった。
 パウンドケーキとチーズケーキには里のブルーベリーを使ったのだが、ブルーベリーの木がまだ若く1週間前ぐらいから少しずつ採っておこう、ということになった。私は日々の業務に追われてなかなかブルーベリーを採りにいけず、焦り始めたある日。政一さん(仮名)が「稼がねばわがね!」と外へ出た。ブルーベリーを採りに行くチャンス!とばかり一緒にディサービスを出て、ブルーベリーの木のある方面へ向かっていると、特養からも麦わら帽子を被った人影が二人。声をかけるとほなみちゃんとカヨさん(仮名)だった。二人もブルーベリーを採ろうと向かっていたところだったのだ。打ち合わせしなくとも、夏祭りの「里や」に向けて、思いが通じている感じがしてうれしかった。試作がさんざんでも、何とかなる!と思えたエピソードだった。そして、「里や」は何度も試作会を重ねて当日を迎えた。
 迎えた当日。浴衣を着ている利用者さん、スタッフ。かき氷を食べながらぱたぱたと仰ぐうちわや扇子。バンド、歌、踊り、ステージでは常に何かが催されていて、会場はDJ齋藤さんによるレゲエのリズムに包まれる。「里や」は完売が出るほど盛況!
 ワークステージの秋子さん(仮名)は通所開始当初、広場恐怖症のような感じで大勢の人がいる場所では、パニックになり泣いてしまい、毎年の夏祭りもハウスや人が少ないところにいて過ごしていた。その秋子さんが今年は、屋台の真ん中に立ってシソジュースを売っているではないか!しかも笑いながら、接客している!これには驚いた。担当の日向さんによると、その日の朝はなぜか怒っていたとのことだったが、そうやって自分を奮い立たせていたのかもしれない。昌子さん(仮名)も広場恐怖症で人が大勢いるところや大きな音が苦手だ。彼女も毎年泣いていたり、ハウスに避難して過ごしていたが、今年はお守りのクマのぬいぐるみをシャツの胸ポケットに入れて祭り会場で過ごした。毎年祭りに参加したくてもできない二人が会場にいるだけでもすごいことなのに、大活躍しているのだからものすごい。
 夏祭り後半の輪踊りもすごかった。さんさ踊りが終わり、輪踊りの流れとなるのだが、どんどん人が輪に入ってきてくれ、一つの輪がふたつの輪になるほど盛り上がった。その中でも、グループホームの守男さん(仮名)は今年も全力で踊ってくれた。その踊りは、やっぱり祈りの踊りに見えて、目に焼き付いた。
 秋子さんや昌子さんだけではなく、全体の雰囲気としても不安や迷いがない祭りだった。いつもの学祭モードとは違った。里は今年で11年目、里全体が思春期を越え、内面の成熟へ向かって進んでいるような、(だといいけど・・)そんな気がした。そしてそのタイミングで3.11が起こったことも関係しているかもしれない。私自身こんなに心から楽しめた祭りは初めてだった。そう感じるのは、どうしてなのかよくわからないけれど、利用者さんとスタッフがそれぞれ、関係を作りながら、繋がりながら当日を迎えられたことと、私自身が生きている喜びを感じられるようになったことも大きいのかもしれない。さんさ踊り、輪踊りをして、今ここで踊っている「自分」、そして隣にいる「あなた」1人1人に祈りに似た思い「生きている」ということを感じた暑い、熱い夏祭りだった。
 
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