トップページ > あまのがわ通信 > 2011年8月号 厨房研修 〜 八戸

厨房研修 〜 八戸【2011.08】

厨房 畑中 美紗

 八戸に食材の調達も兼ねて調理研修に行こうと理事長から話しがあった。今回は、厨房スタッフ全員で参加したいと言うことになり、各ユニットにもお願いをして、3食分を真空パックで準備して出かける体制をとった。初めてのことで、出発ギリギリまでおおわらわだったが、出発することができた。
 私は、八戸の街を歩くのは初めてだったが、八戸は、震災の被害に遭いながら、岩手ほどではなく、復興の勢いもあるようで、街が元気だった。
 ワークステージで、以前からの知り合いだという、『さばの駅』に早速出かけた。私は初めてさばのコース料理を味わったのだが、その調理法の豊かさに驚いた。里でも6月の行事食の鯖寿司は、八戸から仕入れた〆サバを使って提供して好評だったが、「さばの駅」と名乗る店だけあり、ここの本格サバコースは、とにかく肉厚で、味も違っていた。
 特に私がびっくりしたのはさばのみそ煮だった。さばのみそ煮といったら、生臭さを香味野菜のしょうがやねぎで消す、というのが常識だが、全く生姜の味も香りもない・・。それをめぐってあれこれ議論しているところへ、わざわざ、我々が来たというので本店から社長の沢上さんが顔を出してくださったので早速そこを追求する。沢上さんが言うには『さばの生臭さを消そうとして逆に生姜臭くなってしまいがち。そこで違う方法を考えた』というのだった。酒かすと牛乳にニンニクを使っているらしい。銀河でもあの味噌を再現して、ぜひ給食で出してみたい。
 沢上さんは町おこしに賭けている情熱的なおじさんだ。話を聞いていると、こちらも頑張らなければ!!という気持ちにさせられる。「震災後、被災地で採れるはずだった魚が八戸でどんどん水揚げされていて、自分たちだけが得していてはこんな不公平なことはないのだからこれを分かち合うんだ」とも話していた。
 震災から、もう5か月たとうとしているが、まだまだ復興の道は遠い。住田町の実家から近い陸前高田は、私にもなじみ深いところだが、震災後の光景は余りにも現実離れし過ぎていて、実感さえわかないくらいだ。私の父も、地元で毎日仮設住宅づくりで休みなく働いている。この震災から地域が立ち上がるために、いろんなところでみんながんばっている。私に出来ることはどんなことでもやっていこう、と沢上さんの話を聞きながら、改めて思った。
 食事の後、鯖の駅の店員さんのおすすめのお店で飲んだ。港町だからか、みんな社交的で店内の人たちみんなが話しかけてくる。内陸との違いなのか全く違った感覚がある。お店には、観光協会の方とか、ちょっと怪しい老健の事務長さんだったり、海岸でレストランをやっているオーナー夫婦だったりで賑わっていた。その旦那さんが、明日来るのだったら朝のうちにウニを自分が捕っておくと言うので食べに行く約束をした。ウニがあまり得意でない私にとっては、期待半分、不安半分・・。
 翌日は朝市をのぞいてみた。驚いたのは朝市のその広さで端から端まで歩くだけで1時 間はかかるくらいだ。魚など海のものばかりではなく果物、野菜、惣菜、小物あり、喫茶店あり・・果ては車まで売っていた。朝市というより祭りのようだった。厨房のかぁさん稗貫さんは、マグロを1匹丸ごと買いしょって帰った!!厨房用にすき昆布や出し昆布なども調達した。
 朝市の後、昨晩の流れで、例のお店へ。隠れ家的な雰囲気の良いお店で、シェフが約束どおりウニを朝潜って取ってきていた。生うにのパスタはクリーミィで濃厚。普段ウニを食べない私でも、1皿ペロッと食べてしまった。たいしたものだ。シェフが冗談交じりで「今日のメインディッシュはこっちだよ」と出してくれたデザートのプリンは、ウニを抑えてのメインと言うだけあって新次元の絶品だった。
 今回の研修では、全員が食に関わり興味のある人なので、見る視点も違うし、この味はどうやって出しているんだろうとか、いろいろと話が盛り上がった。本物の食材はやはり全然違う。これを縁に八戸とも繋がりながら食材の仕入れなど積極的に展開していきたい。いいものに触れる事で、自分自身の味覚や感覚を鍛えて、里の食事をもっともっと工夫した楽しい料理にして『脱・給食』をさらに推進していきたい。
 
〒025-0013 岩手県花巻市幸田4−116−1
TEL:0198-32-1788 FAX:0198-32-1757
HP:http://www.ginganosato.com/
E-mail: