今月の一句【2011.07】 |
グループホーム第2 鈴木 美貴子
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‐おいしそうな書? |
・梅雨の日に 一文字とめる それぞれに おいしい言葉 嬉しい言葉
・昼下がり みんなで書いた お習字は おいしそうだし うれしそうだし
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雨の日、ソファに座っていたミキさん(仮名)の隣りに私が座ると「なんだか退屈な日ですね〜」と一言。ミキさんは書道をやっていたと聞いていたので、いつか書いてもらいたいと思っていた。よしっと思い「習字をやりませんか?」と誘うと、躊躇なく「いいですね」と返ってきた。「和室が良いですか?リビングのテーブルがいいですか?」と聞くと「みんなで書くのが良いのです。」とリビングを選んでくれた。
テーブルに居たクミさん(仮名)も乗り気になってくれた。普段は消極的なクミさんも「墨するんだべ」と硯をごりごりしてくれている。それをみて「上手ですね」とミキさんがほめる。
さて墨の準備が完了し、いざ筆を持って半紙に向かったのだが、二人とも何を書いたらいいのか手が止まってしまった。私もどうしたものか戸惑っていると、ちょうどそこへ特養スタッフの真白君がやってきた。クミさんがニコニコで手招きして「おめさん書いてけで」と真白君に頼む。「えっ、なんて書けばいいの?」と突然の状況に戸惑いながらも「クミさんの好きな食べ物は?」「肉?魚?」と聞く。クミさんが「魚だな」と言ったので、真白君が“刺身”と大きく書いた・・・。
その字を見て「おいしそうですね〜」と褒めたのだ。私はミキさんのその一言に感動!お習字の字を見て「おいしそう」と評価するミキさんにびっくり。このような粋な言葉がはけるのがミキさんなのだ。(こんなほめ方されると、字は下手でもなんか書いてみたくなるではないか。)
ミキさんには5月にひ孫さんが産まれたので、ひ孫さんの名前を書いてもらいたいと頼むと、スラスラと書いてくれた。その書は、ミキさんが寝泊まりしている和室の壁に飾ってある。その作品が一つあることで、和室の雰囲気がまた違ったものになった。 |
上手だなは〜 |
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‐畑に集う・・・ |
・震災を 越えていくのは 遠くとも 畑に笑顔 種まきながら
・草取りに、ばあさん達が 集まれば ぼうぼう庭も たちまち花壇
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グループホームの裏の畑に、歩さん(仮名)、クミさんと野菜の苗を植えていたところ、震災で避難入居しているミキさんも寛恵さんと出てきてくれた。「これはきゅうりっか?」と苗でわかるミキさん。釜石では畑を作っていたそうだし、先日、大根を蒔いた時には、「私も家の畑に大根蒔きたいから、種わけてちょうだい」と話していた。ミキさんの家は津波で流されてしまったが、今年はグループホームの畑で一緒に野菜を育てて行きたい。
「これは何ですか?」とミキさん、「ズッキーニだよ」と言うと「ズッキュウリっかー」と笑わせてくれるミキさんの雰囲気がいいな〜。
グループホームの花壇が草で埋もれていた。草取り名人のクミさん、歩さんを誘って庭に出た。ミキさんは「みんなここに泊りますか?」と気にしていた。「みんな泊りますよ。今から草とりしてきます。」と言うと「んで、私も行ったほういいね」と車いすでやってきた。草取りしていたみんなに「ごくろうさんね。ありがとうね。」とミキさん。
そして車いすからおりて箱に座り「鎌ないですか?」と草取りを手伝ってくれた。草はあっという間になくなり、そこに花の苗を植えた。どんな花が咲くかな・・・。
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