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プリン展【2011.07】

ワークステージ 日向 菜採

 先月の6月11日から、岩手町の石神の丘美術館で「プリン同盟10周年記念展」が開かれており、ワークステージの昌子さん(仮名)の絵も出展されている。6月はじめに直接美術館に絵を搬入してから、昌子さんはプリン展を見にいくことが待ちきれない様子だった。新聞にプリン展が紹介され昌子さんの絵が載った記事を見て、言葉にはしないが満足げに「にたーっ」と笑っていた。
 今回、10枚の絵を出展したので額装に値段が張った。美術館で額はいくらか借りられたのだが、額の下敷きのマットは自費購入となり、そこそこいい値段がするため、マット購入代を「プリンカンパ」として募ることになった。
 昌子さんのお父さんが作ってくれた木箱に、プリンの絵と「プリンぼきん。」と書き、募金箱を作った!さっそく昼休みにふたりで各部署に募金にまわった。特養には、昌子さんが初めて会うスタッフもたくさんいた。特養スタッフの酒井さんに会ったとき「やくじゃみたい・・・」と怖くて泣いてしまった。でも本当は酒井さんはいい人で、昌子さんの一番の味方になってくれた。その場で「ギターライブで募金を呼びかけよう」と提案してくれて、泣き顔も一瞬で笑顔に変わった。私といっしょに募金に回れないときは、昌子さんが一人で各部署を回っていた。人見知りが激しい以前の彼女を知っていると信じられないくらいだ。回り終えて「いっぱい集まったよ!」と募金箱をジャラジャラ振って帰ってきた。なんとたった1週間で2万円ほどのカンパが集まったことに驚いたし、昌子さんが周りの人を巻き込むパワーにも驚かされた。
 そして私たちもいよいよプリン展に出かけた。昌子さん、中屋さん、関さん、まりえさんにくわえ、昌子さんはワークの新人、真央ちゃん(仮名)も誘い出し、6人で岩手町に向かった。
 行きの車の中では、昌子さんがつくったプリン同盟の会長三河さんへのプレゼントで盛り上がった。プリンの絵が書かれたうちわや、プチプチにいろんな色のシールを貼ったグラデーションのきれいな作品などなど…。なかでも特に話題になったのは、「ましゅろープリン」というプリンに羽と足がはえた謎の生き物の絵。無邪気な感じでこちらに向かって「べーっ」と舌を出している。「これ一体なに?」というみんなの声に「ましゅろープリン!だから〜ましゅろーだってば!」と昌子さん。「ましゅろーってなんだ?」と悩んでいるみんなの顔をみて楽しんでいた。今までの昌子さんのやわらかい感じの絵とは少し違った感じで、昌子さんの中でどんどん世界が広がっているのを感じた。
 車で1時間半、石神の丘美術館に到着。腹ごしらえをした後に美術館に入場!ところが入口で待ち構えていたのは、プリンに人間の足と手と目がついた、かなりグロテスクな人形。その人形が怖くてなかなか美術館の中に入れない昌子さん。逆に、真央さんは奇妙なその人形に興味津々で、人形と一緒に記念撮影していた。もちろんその人形は入口だけではとどまるわけがなく、展示室にはもっと大きな人形が飾られていた。私たちが作品を見て回っていても、昌子さんはなかなか展示室に入れず遠目で見ていた。でも、三河さんが制作した昔話の「大きなかぶ」をパロった「大きなプリン」という、絵本を見つけてニコニコになり、それで切り替えることができた。
 次に私たちは「スタンプリンラリー」に参加。美術館のまわりの森を散策しながら10個のスタンプを探しに出掛けた。「うまプリン」や「ねこプリン」、シークレットスタンプも押してすべてのスタンプリンを集めた。広い敷地のなかにところどころにプリン柄をしたきのこが生えていたり、木にプリンの絵がぶら下がっていたりとプリン同盟にいたずらはいたるところにあり、私たちは終始大興奮だった。
 ラベンダー園の前では「野プリンの会」というイベントが行われており、そこで会長の三河さんに会うことができた。「プレゼント渡せるかな?三河さんに会えるかな?」と心配していた昌子さんもホッとした様子。3週間かかってためこんだ三河さんへのプレゼントを渡した。紙袋からつぎつぎでてくるプレゼントに三河さんもびっくりしていたが、やはり「ましゅろープリン」の絵は三河さんも解明できなかったようだ。また、例のグロテスクな人形を作っている鎌田さんにも会うことができた。昌子さんは微妙そうな表情をしていたが、「あの、あの、ましゅろープリンつくってください」と頼みつつ、「もっとかわいいやつ作ってください・・・」と真剣にお願いしていた。
 帰り際、いろんな方のバッジやキーホルダーなどの作品が入っている「ガチャガチャ」に挑戦。昌子さんのつくった「ゆうほうプリン」の缶バッジもガチャガチャのカプセルに入っていたが、なかなかそれはでてこない。何回まわしても出てくるのは、あのグロテスクなプリンの人形だ・・・。昌子さんもプンプンと怒っていたが、なんだが楽しそうだった。本当はその人形が好きだということなんだろう?
 美術館を4時間かけて堪能。帰りの車中、スタッフがぐっすり眠っているなか、昌子さんは興奮が収まらず音楽を聴いて楽しんでいた。普段、人の目が気になってなかなか外出できない真央さんは、この日は周囲の人を気にする様子もなくプリン展を思う存分楽しんでいた。別れ際、真央さんが誘ってくれた昌子さんに「昌子ちゃん、今日は誘ってくれありがとう」と声をかけており、いっしょに出かけられてよかったと思った。
数日後、私のところにやってきた昌子さんから「あの…募金してくれた人に絵をプレゼントしたい」との提案があった。昌子さんは募金にまわったときお金を入れてくれた人の名前をメモしていた。「いつかお返したい」という思いからだったのかもしれない。募金してくれた人は30名ほどいる。その人その人のことを考えて絵とメッセージが書いている昌子さん。その絵をプレゼントしたところからまた何かが生まれそうな予感がしてワクワクしている。  
 
スタンプリンラリー中に見つけたスプーンの前で


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