トップページ > あまのがわ通信 > 2011年2月号 特養で大活躍 その1


特養で大活躍 その1【2011.02】

ワークステージ 日向 菜採
 

 一昨年に開設した特別養護老人ホームは、ワークステージの利用者の活躍する場ともなっており、現在特養のユニット・厨房で7人の利用者が働いている。その活躍ぶりは周囲の目を見張るものがあり、本人たちも自信に満ちていて、以前とは全く違った顔つきに変化しているのが見て取れる。そうした活躍の一端のレポートとして、第一回目は、ユニットの北斗とすばるを担当している冬美さん(仮名)と祥くん(仮名)を紹介したい。
 二人のポイントは、それぞれお気に入りのエプロンと三角巾をつけて、バッチリ格好をきめて仕事にはいるところだ。主に、食事の盛りつけと食器洗い、おやつづくり、シーツ交換、掃除などなど、介護スタッフに負けないほど仕事は盛りだくさんだが、そのほかにも高齢者といっしょに場を盛り上げる雰囲気づくりも大切な役割になっている。本人たちは、その役割はまったく感じていないと思うが、自然に場を盛り上げてくれたり、雰囲気を作ってくれたりするその力に、いつも感心させられる。
 特養のユニットにワークの利用者が入ったのは、ちょうど昨年の今頃で1年になる。最初は、立ち上げ1年を経ても、なかなか里らしい雰囲気が出てこない特養に業を煮やしてしていた理事長が、ワークの活発で元気な感じを特養に活かせないかということになり、北斗の和室を借りて4人の利用者で箱折りや大葉の結束作業を始めた。
 そのときのメンバーに冬美さんがいたのだが、集中力が続かず、箱折り作業もペースが保てず、すぐに疲れ果てた感じになって、へとへととうずくまってしまい、一緒に組んでいる仲間からも心配をしてもらうような状態が続いた。 そこで以前、冬美さんが、祥くんと組んでやっていたデイサービスの盛りつけと食後の洗いものがいい感じだったのを思いだし、そのふたりに再びタックを組んでもらい、北斗・すばるでも、洗いものや盛りつけを中心にユニットの手伝いに入ってもらうことになった。
 その初日、様子を見に行くと、10時のお茶の時間なのだが、高齢者といっしょのテーブルでふたりは肩身が狭いような感じで身を丸めてうつむき加減でコーヒーを飲んでいた。私は内心大丈夫かな、やっていけるかなと心配になった。 1年前のその時のふたりの印象は今でもよく覚えている。
 ところが今は打って変わって自信にみちた表情をした二人がユニットにいる。先日、私がすばるに行ったら、冬美さんが利用者のおばあさん達とコーヒーを飲みながら笑って話をしていた。私はその姿にとても驚かされた。もともと冬美さんはあまり社交的なタイプではない。積極的に人と話す方ではないし、どうしても一人でいるか特定の相手と過ごすことが多かった。けれども、すばるの冬美さんはとても良い表情をしていて自然と周りに馴染んでいた。それを見て私は、この1年、仕事を通じて冬美さんは大きな変化をしたなと実感した。先日、冬美さんの相棒の祥くんが通院で休んだ日、冬美さんは少し体調が悪かったのだが「祥くんがいないから自分がやらないと」と思い、出勤したことがあった。 こうした責任感が出てくる裏には、仕事を通じた自信や誇りが育ったのだと思う。わずか1年前、なかなか集中力が続かず、仕事にはまれず泣いていた冬美さんが、今はきりっとした表情をして、堂々としている。
 祥くんは、半年前「おやつづくりに挑戦してみたい」と取り組んで、今では、おやつ作りをすっかり担当する役割にはまっている。おやつ作りは自分仕事で、腕の見せ所という感じで、どんなおやつを作るか、材料は何が必要かまで自分で考え、特養のスタッフに提案している。もとのレシピを自分でアレンジして、工夫したりして、おやつづくりに賭けている感じだ。相棒の冬美さんのことも気遣ってくれ、体調が悪そうだとすぐにスタッフに連絡をくれるなど、リーダー的存在でもある。
 夕方、仕事を終え特養から戻ってくると、「今度あのお菓子作ってみたいんだよね」と祥くん。「今日ロールケーキ失敗しちゃった」と冬美さん。ふたりはいつも笑顔でその日あったことを話してくれる。ふたりの表情を見ていると仕事が楽しそうだし、仕事に自信を持っている。おっかなびっくりで仕事をこなしていた以前とは違って、今は心から湧き上がってくる意欲や楽しさなどを二人から感じさせられ、人間ってこんなに変われるんだという感動をもらっている。これから特養でどんな活躍をしていくのか楽しみだ。  

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