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“変わる”ってすごい!【2011.1】
特別養護老人ホーム 中屋 なつき

 2011年が来た。里として10年目にあたる記念すべき新年が始まった。これまでの「怒りと戦いの10年」を振り返るとともに、気持ちも新たに、これからの10年への決意が湧き起こる。
 年明け、雪かきをしていると、車から降りてグループホーム第2の坂を上っていく一団を見つける。よく見ると歩さん(仮名)の姿がある。あぁ、帰宅して家族と過ごしてきたんだな…と思って、駆け寄り、新年の挨拶を交わす。お嫁さん、孫さんらに囲まれた歩さん、「また面倒してけでね」といつもの極上の笑顔だ。「よかったね、お正月を家族さんと一緒に迎えたの?」と聞くと、「やっぱりなかなかお泊りは難しいですけど、今日、一緒に外出だけでもと思って出かけてきたところです」とお嫁さん。
 二年前は在宅で頑張っていらっしゃったが、里との出会いはDS利用が始まりで、初めてお会いしたときには、介護に疲れ果てているというか途方に暮れているというか、歩さんとの関係にもギクシャクとしたものが感じられ、とても暗く重い表情で辛そうなのが印象的だった。その人が今、とても晴れやかな笑顔で話してくれている。約一年のデイサービスのお付き合いを経てグループホーム入居が決まり、すっかり生活にも馴染んで早一年が経とうとしている歩さん。その傍らに、お嫁さんとの関係の変化やお嫁さん自身の変容も見てとれて、思いがけない新年挨拶になった。
 一方、特養の利用者の中にも何人か、年越しを自宅で迎えた方もいて、その日は続々とホームへ帰ってくる日だった。どなたも久しぶりに家族と過ごし、晴々とした表情で戻ってくる。中でも特に武雄さん(仮名)父子の表情には驚いた。
 昨年、長年住み慣れたグループホームから特養へ引っ越 して初めての年越しを、自宅で二泊、家族さんと共に過ごしてきた。戻った時の第一声は「ただいま、また世話になるよ」と満面の笑顔なのだ。さらに送ってきてくださった息子さんにも穏やかな笑顔がこぼれる。「みんなが寝てからも、ひとりで泡盛飲んで、次の日、立って歩かれないくらいだった」と笑いながら武雄さんの家での様子を話してくれる。
 以前には到底考えられない状況だ。「家に帰さないなら火をつけるぞ」とスタッフを脅す武雄さん、「暴れるから絶対に帰さないでください」という家族さん、その間でグループホームでは何度も格闘の日々があった。それが今はどうだ「酒飲んで大変だった、困った」という話ではなく、そのやり取りには余裕さえ感じられる。かつてのいったん家に帰ってしまったら里には戻って来ないのではないかという心配も、今ではまったく感じさせない武雄さんの柔らかさもあった。戻ってからユニットのみんなと一緒に書いた書初めの文句が「ありがとう」という文字だったのにも感激した。格闘のつきあいを経て5年、変われば変わるもんだなぁ…と、驚きと嬉しさいっぱいの出来事だった。

 銀河の里が人とその関係の変容のきっかけとなれば、こんなに嬉しいことはない。「変わりたい、変わらなきゃ」と思い続けて10年が経ってしまったが、振り返ればやっぱり少しは私も変容のプロセスを歩むことができているのでは…と思う(そうであってほしい!し、これからもそうありたい!)。
 かけがえのない「あなた」と「わたし」とが出会って、関係性のプロセスが始まる。利用者もスタッフも家族も、みんなが互いに関わってくる。その関係性がどう動いていくのか、どう変わっていけるのか、里はそうした物語が日々熟成されていく“器”なんだなぁ…と改めて感じた新年だった。
 
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