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銀河の里として行ったリンゴ収穫【2010.12】
ワークステージ 米澤 充

 ワークステージ銀河の里の新規事業として、今年はリンゴ栽培に取り組んだ。春先の肥料撒きから始まり、花摘み、摘果、葉っぱ取り、そして収穫まで、リンゴ栽培の一通りを終えた。最後の1本の収穫は、高齢者も含めて銀河の里全体で収穫したいと思い、各部署から参加を募った。

 これに是非参加してほしかったのが「リンゴ栽培は大変だよ〜」と苦労話を私に聞かせてくれた、特養ホームの祥子さん(仮名)だ。その祥子さんを“畑の先生”と慕っている一番弟子の三浦君に、リンゴ畑に立つ祥子さんの姿を見てもらいたかった。
 グループホームのより子さん(仮名)は、運営推進会議で「銀河の里の中だけではなく、もっといろんな場所へ連れてってください!」と要望する人だし、テンションがハイとの情報もあり、山の中のリンゴ畑に誘いたかった。声をかけると即答でOKだった。「当日は何時に迎え来てくれるの?」「10時に行くよ」「じゃあ9時30分には出られるように準備しとく。それと米澤さんの赤ちゃんも見せてけでよ!」そのやり取りを聞いていた職員が「あら、より子さん。どこに行くの?」と質問したので、「デートだよ」と私が冗談で答えると、「誰、この60(歳)のばさまとデートして何が楽しいってや!奥さんに申し訳ねぇべ!」と楽しそうに話すより子さんに大笑いした。

 11月27日は天気にも恵まれ、リンゴ畑には全部署から職員・利用者がそれぞれ集まり、総勢24名のイベントとなった。
 祥子さんはリンゴ畑に到着後、実のなったリンゴの木をみるやいなや目つきが変わった。野菜畑で見せる目つきとは違う、きりっとした仕事モードという感じで、まだみんなが集まっていないのに収穫かごを担いで早々と収穫をはじめてしまうほどだった。みんなが集まり、いよいよ収穫が始まると「リンゴを引っ張って取ってはだめだよ!軸を残すように回して取らねば売り物にならないよ!」“畑の先生”の指導がリンゴ畑に響く。収穫後、みんなでもぎたてのリンゴを食べたが、祥子さんはリンゴの選別を一人でもくもくと行い、仕事モードはなかなか止まらなかった。
 より子さんは、外出に満足したのか、収穫は早々と終え、リンゴ畑の落ち葉で焼いた焼き芋を食べながら、ワークステージの若者と嬉しそうに話していた。笑顔のより子さんから、外に出かけるっていうのは、遠くに出かけたり、お金をかけたりしなくても、身近なところで出来ることもあると感じた。

 米澤家の、昨年の収穫作業は雪が降るなか12月中旬までかかったが、今年は銀河の里の事業としてリンゴ班の活躍もあり、収穫作業は半月以上もはやく終了した。りんご園が大勢でにぎやかになった事は、去年までは想像もできなかった光景でとても感慨深かった。
 リンゴ栽培を決意し、婿として米澤家にやってきた2年前、何も分からない私に、祖父はこう言った。「自分で好きなようにやってみていいよ。経験して少しずつ覚えていけばいい。まかせたよ。」その言葉は、リンゴ栽培の作業面の事を言われたのかと思っていたが、今年の皆で行なった収穫のように、今までの仕組みや考え方を超えた、リンゴ栽培の取り組み全体を含んだ言葉だったのかもしれない。今年の5月に亡くなった祖父に、24人の笑顔のこの光景を見せたかった。秋晴れの強い日差しは、祖父からのまなざしのようでとても眩しかった。

 私は里の広報を担当しているが、これからも通信を通じて、銀河の里の取り組みの様子、スタッフや利用者の表情を伝えて行きたいと思う。リンゴ作りや田んぼ作業など、農業は銀河の里の基盤であり続けるだろうし、障がい者、高齢者支援、地域の在り方なども考えなければならない。あまのがわ通信の存在意義や、あり方を常にフレキシブルに捉えつつ、編集委員としても挑戦していきたい。

一人で選別作業をする祥子さんに
「ほら、みんな食べてらじゃ」と声をかける三浦君


米澤りんご園にて記念の集合写真
 
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