トップページ > あまのがわ通信 > 2010年12月号 厨房奮闘紀その壱 器と食事と人間を考える〜いざ合羽橋道具街めぐり〜

厨房奮闘紀その壱
 器と食事と人間を考える〜いざ合羽橋道具街めぐり〜【2010.12】
厨房 畑中 美紗、小野寺 祥

 銀河の里の特養ホームは4ユニット40名の方が暮らしている。何事も施設臭くしたくないという銀河の里なので、各ユニットの食器もそれぞれのカラーがあって、かわいらしい感じのユニットもあれば、和の感じのユニットもあるといった個性を持っている。
 厨房のスタッフも各ユニットに入って、一緒に食事をし、食事介助にも関わったりする。利用者ひとりひとりを把握しつつ、その日の体調を見ながら、個々に合った食事提供ができるよう取り組んできた。
 その中で、「この料理はこんな皿に盛りつけてみたい」とか、「この人はこんな皿だと食べやすいんじゃないかな?」という思いがでてくる。食事は、色、香り、音、温度、感触、形や、食卓の雰囲気、温度、湿度、明るさなどが総体として味が決まってくる。さらに食器の持つ要素は大きなものがあり、大きさや、色などが不釣り合いだと料理が台無しになる事さえある。一品一品が良くても、盛りつけに失敗すると食欲もなくしてしまう事がある。
 料理に合った適切な温度で、優美な盛りつけを目指し、個々にあった食事を出したいと言う想いが高ぶってくるなか、厨房として食器からも料理も攻めて行きたいという思いが強くなっていった。それを厨房会議で提案すると、「研修の一環で合羽橋を歩いてきたら」と理事長。「料理に関わる人間なら一度は合羽橋を見ておいてもいい」と言う。合羽橋は厨房道具や食器類を取り扱っている店が通りの両面2キロにわたって並んでいるという。話を聞くだけでワクワクしてくる。たくさんの食器、道具を見て、肌で感じ選ぶことができるなんて・・・。「…えっ?いいんですか??」と私たち。やりたいことの背中をドンっと押してくれる、これが里のすごいところ!!さらにユニットの現場のスタッフも加わり4人で合羽橋に行くことが決まった。

【あなたのための食器さがし】
 合羽橋に足を踏み入れると、食器、陶器、厨房道具店などが歩いても歩いても続いている。話しには聞いていたが単純に驚く。しかしこっちもプロの端くれ、俄然、のめり込んで、「よっしゃー」と気合いが入り、手当たりしだい店に飛び込む。まずは魚を盛り付けるメインの角皿を!ソフト食もワンプレート盛りではなく、粋な小鉢で組み合わせたい!お椀もほしい!箸もほしいなぁ…と店を眺める。物色しているうちに、「この食器って“オリオン”っぽいね」「“すばる”に合いそう!」とイメージが動き始める。そして、この皿○○さんに似合いそう、○○さんに買ってあげたい!と自然に利用者さんと結びついた選び方になっていった。「あの人にはこんな皿がほしい。」と一人ひとりにあった食器選びは我々にとって極上の時間となった。

 施設給食では、ともすれば、樹脂製の破損しにくく扱いやすさを優先した食器や、洗い物を少なくしたいので皿数を少なくという雰囲気が出がちである。今回の研修をきっかけにそんな効率重視の低次元の給食からはすっかり解放されて、多くのスタッフと食器や食事について話ができたのは、厨房としても大きな収穫だった。
 初めての合羽橋はワクワクしっぱなしだった。なにより種類がたぁくさん!見たこともない厨房用品もあり、包丁も器もいろんな種類がある。歩くだけで刺激的だった。1日くらいじゃ時間がぜんぜん足りない。外国人が和包丁を買っていたりすると、なんか不思議な感じになったりした。厨房に携わっている人がこんなにいるんだなぁと感じながら、同時に自分もその中の一人だと思うとうれしくなり、「もっともっとがんばりたい!」という気持ちにさせられた。
 どんな食器に盛るかで料理はまったく別物になる。その食器を選ぶのは、私たち厨房の技でもある。給食にしたくない。あくまで食事とは何かを突き詰めて行きたい。これが私たち厨房の想いだ。「そこら辺の厨房とは違うぞ!」という気概で挑戦していきたい。
 
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