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パリの旅 第三回 【2008.09】

グループホーム第1 西川 光子
 

 30年前、私のハネムーンはフランス、ドイツ、イタリアを駆け抜け、そして最終はパリでゆっくり過ごそうというコースだった。
 私にとっては初めての海外旅行で、多くの国を回りたくての駆け足旅行だった。ホテルはその日、気に入ったところを探して決めるという、かなり気ままな旅行であった。
 夫が学生時代にアルバイトをしていたという、スイスのチュリッヒでの散策は実に楽しかった。スイスはまさにメルヘンに出てくるような、緑の美しい風景が印象に残っている。 ドイツへは電車で移動したが、車内で聞こえてくるドイツ語は力強く、いかつい感じでドキッとした。しかしサッカーを語るドイツ人はとても明るく生き生きとしていた。ライン下りで飲んだ白ワインは、甘くとろけるような忘れられない味だった。 ゴシック建築の代表といわれる、高さ160メートルのケルン大聖堂は、ケルン駅の改札口を出ると、ドーンとものすごい迫力で目の前にそびえ立ち、目を見張る荘厳さに驚いた。


 イタリアではルネサンスの都、フィレンツエを訪れた。街全体がすべて中世のレンガ一色である。気持ちも一気に中世へタイムスリップした。フィレンツエの象徴サンタマリアデルフィオーレの大円蓋は実に優美で、その大きさも圧倒された。路上ではいろいろな店が出て活気に満ちており、言葉は通じないものの、イタリア人の明るさと陽気さが心地よかった。皮細工の店が多く、ある店で赤肉のオレンジをもらった。これがおいしくてすっかり仲良し気分になり、茶色の財布とバッグを買った。数日後パリで少年達に盗られたのはこの財布である。新聞紙はスリの少年達の商売道具で、バッグの上に広げて見えないようにしてもう一人が話しかけて気をそらしたスキにバッグから財布を抜き取るのだ。


 ハネムーンの最終コースのパリに着いて、さあ今からパリを満喫しようという時!!夫が慌てふためいて言う 「やあ〜まずい!!日にちを間違えていた!今日帰らないとまずい!」突然の事についていけない私。「ベルサイユ宮殿だけでもいきたい!!」 「いや無理だ!すぐ帰らないとダメだ。又連れてくるから必ず!」「そんなこと言ったって来れるはずないでしょ」「仕事を休むわけにはいかない。とにかく帰る」「じゃ私一人残る!!」「そうか、安全なところだから大丈夫。ホテルも帰りの切符も手配するから。何かあったらすぐ飛んでくるから」・・・夫はバタバタと手続きを済ませ空港へと向かった。空港についたとたんに不安になった。心の中で”本当は強引に私を連れて帰ってほしいのよ”と涙で訴えたが、手を高く上げ「じゃあな〜」と夫の姿は消えた。
 一人になって、涙があふれた。涙のあとには怒り、そしてその後はささやかな度胸が湧いてきた。バスでノートルダム寺院まで戻った。パリの中で唯一知っている場所だったので、ほっとしたのか、教会のパイプオルガンの音色に酔いしれ一人ボーとしていた時、少年達に財布を盗られたのだ。独りぼっちになって間もなくなので、すっかりパニックになって派出所にかけこんだが後の祭りだった。その後、 ベルサイユ宮殿、サクレクール寺院と地下鉄で回った。人間崖っぷちに立たされるとなんとかなるものだ、とちょっと開き直った。ホテルも気に入ったところに変えてみた。


 

 今回30年ぶりにパリに訪れて、普段忘れていたことがフツフツと思い出される”プレイバック心の旅”を体感することになった。前回一人で訪れたサクレクール寺院へ今回は二人で行った。その後モンマルトルの丘に登った。寺院の中に入ると、なんと・・・・まさかこんな感動に出会えるとは夢にも思っていなかった。その詳細は次回で。
 

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