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パリの旅 第一回 【2008.07】

グループホーム第1 西川  光子
 

 6月、1週間のお休みをもらい、結婚30周年記念に30年ぶりに夫と花の都パリへ旅してきた。


 出発の前日までグループホームでの濃厚な日々。頭は旅どころではない状態であったにもかかわらず、いざ当日になると朝の3時半の起床で、切り替わっている私がいた。いかに気持ちが体を動かすものであるかと実感しながら仙台空港へと向かった。 予定より早く1番のりで空港に着き、空港ターミナルはまだ閉まっており5分ほど待つ。2番目に到着した人は大柄の黒人で”グッモーニング”とお互い笑顔であいさつを交わして”海外に行く”という気分がぐっと高まる。
 私は飛行機が離陸する”時”がどうにもたまらなくワクワクし、感受性が高まる。”あっ 今地球を離れた!”と思うその『瞬間』が何ともいえない。あとは上昇に身をまかせ、天へ向う気分。雲の層を抜け、快晴の空に浮かぶと異次元の思いに浸る 。


 なぜに天はたたえられるんだろう?天に召される、昇天、天は極楽・・・などなど。そんな気持ちをいだきながら見る空はなんとも味わいがあり、不思議な世界そのものでいくら眺めていてもあきない感じがある。宇宙にボーと居させてもらう実感。みんなが悠久の時限で繋がっているという感じが湧いてくる。 空港で”さあ〜10時間だぞ。退屈しないよう本を買おう”と本屋に行く。真っ先に目に飛び込んできた本が、茂木健一郎の「すべては音楽から始まる」という本。迷うことなくそれを選び、旅の仲間とした。銀河の里の現場で働きはじめてこんな本に感じ得る自分になったなと思う。
 席は三人掛けで窓側でなかったが、隣り合わせは、「よろしく〜」と声をかけたくなる優しい雰囲気を持った若い女の子。「スケーターの村主さんに似てるね」と話すと「よく言われます」との返事でうち解ける。「わあ〜すごいなあ〜見て下さい、あれ!!」と私を窓に誘い、国際便の飛行機がずらりと並ぶ光景に感動している。「お〜すごいね、いろいろの国に飛ぶんだね」と壮観な情景を彼女と共に味う。


 彼女も”離陸の瞬間がたまらない”というので、その瞬間”今だ”という時、二人の目と口が大きく開いていた、たわいもない共感に心地良い時間を過ごしながら旅が始まった。
 彼女は横浜の大きな病院に勤務している看護士で夜勤明けだという。お父さんの仕事先がスイスで両親と一緒に初めての外国旅行とのこと。つい私も仕事柄医療とのギャップを語りたくなり医療側の認知症に対する気持ちを聞いてみたりする。「意志がすぐに伝わらず、もっともっとじっくりお付き合いできたらどんなに良い治療ができることかとあえいでます」と話す。認知症側から通じる人で空の旅はミニミニフオーラムとなった。
 そんな感じで、あっという間にドゴール国際空港に到着。時刻は夕方で、宿まで直行。裏町を走るバスから見るパリ。道は狭く、車・スクーターでゴチャゴチャ。ゴミは散乱し、とても花の都とは思えない光景。それに比べ日本はなんときれいなんだろう。


 荒々しい運転に耐え、やっとの思いでホテルに着いた。宿は日本で言うならペンションといったタイプのホテル。私達が到着すると「やあーようこそ、待ってたわよー」というジェスチャーとフランス語で迎え入れてくれる気さくな感じのご夫婦。
 ご主人はインテリアのデザイナーで部屋の置物・飾りは自作のもの。とても粋な雰囲気が漂う。浴槽にまでお花を飾ってある。早速ディナーとなる。料理は庶民的でワインを数種。前菜、キッシュ、サラダ、スイーツ。塩味が強く私は少しひいてしまった。
 言葉がわからないながら、お話が面白かった。私が知っているフランス語は「”アン、ドウ、トロワ”」と数を数えて指を折ると、フランスでは「アン、ドウ、トロワ」と指を広げていくと言う。日本はイン(内)、ヨーロッパはアウト(外)なんだと。さっそく文化の違いにふれる。なるほど〜。これは面白い。
  夕食後、長旅だったし今日はお風呂に入って休みましょうとバスタブに横になった。ところが身長が足りなくてか、つかまる所がなくてなのか、起きあがるのに四苦八苦。ひっくり返ったクワガタがもだえているような有様で慌ててしまった。明日から地下鉄・バスと徒歩によるオリジナルな旅のスタート。どんなハプニングに出くわすのだろうか、ワクワクしながら眠りについた。 つづく。
 
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