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コラさんとわたし 【2008.07】

グループホーム第2 板垣 由紀子
 

 新年度になって、新人スタッフが加わり、チーム作りに手間取る時期が続いた。私はグループホーム全体の見守位置に張り付かねばならない立場に専念せざる得ず、コラさんにジャックされるがまま身を委ねるようなゆとりがしばらく持てなかった。
 最近になってよもぎ餅をついた日、久々にコラさんの部屋でドンと腰を落ち着ける事ができたときコラさん私に言った。
 「イシドリヤ(私のことコラさんは住んでいるところで呼ぶ)だけはと信じてら〜のにと思ってらった。俺もわがねぐなって甘えるがと思ってらった。」 コラさんは、おまえを信じて、呆けたらおまえに甘えようと思っていたのに、おまえは俺を棄てていってしまったとコラさんらしく皮肉まじりに私を責めているのだ。それでもヨモギ餅を「うまい」とほおばる。コラさんの饒舌は止まらない。
 「豊さんが唸るのも民謡歌ってらな〜、サチさんが怒鳴るのも浪曲18番始まったな〜と思うごとにした。」と言う。ものは考えようだというのだ。それができればたいしたもんだ。悲観的なタイプのコラさん。「言うのはたやすいよ」と私は吹き出しそうになる。 「ユーモアもなぐさねようにさねば〜。人間面白ぐねばふくれてしまう。朝の空気ぬげ(温かい)いがった。(よかった)。神経でうんと変わるんだ。」
 そうそうその通りと久々のクラさんトークに浸りながら納得しながら、「クラさんもよろしくね」と言ってしまいそうになる。 「悩まねば人間でねんだ。餅だばふくれてもいいが、人はふくれてはわがね。」 全くその通り。
 「黙って任せよう〜。譲った以上は、黙ってやね〜ど。」  コラさんは自分に言い聞かせているのか、深い言葉をはきながら、「♪なかなか思うようにいかねもんだ〜」と歌を歌っている。そうやって毎日あがいているコラさんが人間らしくて好きだ。


 実はこの日、私は結構落ち込んでいた。自分が誰とも繋がっていなくて、“独り(ひとり)”の気がして、変な一日だった。コラさんの部屋で話し込んで救われた。コラさんも、あんたに救われたって・・・・。お互いな〜んにもしてないまま救われたりする関係が面白い。
 イケイケの私も、基本がイケイケだからこそ「あちゃ〜」と悩んだり、「オッと〜」とずっしり重たくなることもある。自分で自分が嫌いになることもある。それは、出してしまった自分と向き合う人との関係で起きてくる。人から理解されがたいところもコラさんと似ている気がする。
 悩んで重たくなるとすごく苦しいけど、な〜んにも関わらずシラ〜と生きるより(もう、きっと出来ないけど)深いところを生きる事ができると信じている。


 

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