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シンポジウムに参加して【2008.06】

グループホーム第1 西川 光子
 

 先日5月20日「認知症への対応」と題した認知症予防シンポジウムが、ぼけ予防協会主催で毎日新聞、岩手日報などの協賛で盛岡アイーナで開催された。
 現場に身を置き日常的に認知症の人の人間的深さ迫力、威力といった魅力を見せつけられてきた私には「対応」とか「予防」という言葉がすでになじめないので、普通なら全く関心が湧かないのだが、今回は当方の理事長がパネリストということだったので無理を押して都合をつけ、参加したのだった。
 どんなディスカッションになるのか楽しみで気持ちを弾ませたり、タイトルの付け方から推測してあまり期待できないかもと押さえてみたりで開演を待っていた・・・。


 基調講演は岩手医科大学の医師高橋智先生で、わかりやすく認知症を解説され、やさしい内容で「生活に支障があるかどうか、環境によって診断が変わる」という点を語られて共感できた。パネリストの金沢先生は、医師で自ら訪問診療をしてこられた方。「一人の人間として検診に行くし、家族の一員になれる」と医療に一番求めたい所を語られ、とてもたのもしく思えた。家族会代表の方は夫を4年間在宅で介護した体験談を語られた。
 我が理事長は15分の持ち時間で語り尽くせぬ普段の現場の実践を500枚の写真を使って紹介した。しかし「持てる力を出しているオリジナルのケアですね。」とさらりと流すだけのコメンテーターの一言は、理解が浅く物足りなさを感じた。
 最後に再度岩手医科大学の高橋先生がまとめの発言として認知症の人の環境づくりの決め手として「昭和の心」を取り戻す大切さを訴えた。しかしこれは、現実とはかけ離れた希望的妄想で、認知症とそれを支える社会のありようをあまりにも単純に収めてしまおうとするお粗末さを感じて、ため息をついてしまった。


 個別には、県の役人以外は、現場で実践されている真摯な姿勢を感じさせる登壇者で、内容も興味深かったのだが、進行とまとめ方があまりに事なかれに終始し迫力を欠いていた。シンポジウムが進んでいくうちに私はイライラしてきて、最後は「でもでもこんなもんじゃない!!」と叫びたい心境に駆られ、納得のいかなさがつのった。
 会はディスカッションにはならず、行政と医療、施設のうけ入れも整っていて「何も心配ありません」と言ったようなきれい事でまとめようとする甘ったるさに、腹立たしくなってきた。
 ”認知症”との壮絶な戦いや、人生をかけたエネルギーのぶつかり合い。その中で生まれてくる人と人とのつながりや出会いを現場で体感している私にとって、今回のシンポジウムは、認知症の理解や環境の未整備に不安、不満をかかえている現状がありながら、そういったものを表面的な見方で封じ込め、ごまかそうとしているようにさえ思えた。
 認知症を「対応」などでごまかそうとしてもうまくいくはずはない。ごまかすのではなく社会のひとりひとりがきちんと向き合う必要がある。こうした当たり障りのない会合ではなく、現場からのリアルな現状や物語を、いろいろな形で発信する場や機会をつくって、認知症を社会や人生にどう生かすかを考える広がりを作り、認知症を軸に未来に向かって新たな文化を生み出す活動を展開する必要を強く感じた。
 
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