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銀河の里は「個室・ユニット型特養」に夢をどう描くのか(1)【2008.06】

施設長 宮澤 京子
 

 国の政策では、利用者からホテルコストを求めやすいユニット型特養を推進し、新規に設置する特養は、ユニット型でなければ認可や指定をしない制度の縛りが設けられている。
 花巻市の介護保険事業計画では、地域密着型の介護施設として「小規模特養」の計画が上げられている。地域密着型サービスにおいて、先駆的に事業展開してきた当法人は、相談業務から在宅サービスそして終の棲家としての特養までの一環した事業を担う使命があると自覚し、市の計画に沿って小規模特養の着手に2年前から準備を進めてきた。
 グループホームでは、身体的に機能が低下して寝たきり等になった場合、電動ベッドの設置がない・車いすの移動可能な十分なスペースがとれない・家庭用浴室しかない等のハードの理由で、他の介護施設に移ってもらわざるを得ず、利用者の身体状況が変わったことで、今まで築いてきた人間関係が切れたり、生活の場を移さなければならないことは残念であり、切ないとの声があった。グループホームでの生活の流れで暮らせる特養ホームの設置は、築いてきた人間関係をそのまま維持できるということで利用者やスタッフ双方にとって意味のあることと考えられる。
 一方、当法人は相談業務、デイサービス等の地域密着型のサービス提供で地域福祉に貢献すべく事業を展開してきた。長丁場の在宅介護を継続していく家族にとって‘鍵’は、親族以外にいつでも宿泊の介護を頼める場所があることである。そういうところがあると介護者が出かけたり、休息をとったりしながら、支えができるので、在宅支援にとってショートステイは必須事業といえる。


 上記がユニット型特養とショートステイを展開する社会的動機であるが、制度に乗って施設を運営するだけでは、一気に管理に成り下がる危険がある。一人の人間に深く迫り向き合うことは、その背景にある社会や時代と歴史と向き合う事でもある。ひとりひとりの出会いの中から普遍を発見的に探索していく銀河の里らしい夢を描いていく必要があると考える。ユニットケアに賭ける里の夢を模索してみたい。
 介護保険が始まる以前の措置時代の特養ホームは「介護者」と「要介護老人」という上下の図式が強固に存在し、雑居部屋でプライバシーはなく、介護側の都合が優先された業務中心の日課の生活を余儀なくされるような、いわば集団飼育時代が長く続いたと見るべきだろう。
 やっと平成12年に「契約時代」を迎え、高齢者がカスタマーやユーザーとしてヘルパー・デイサービス・ショートスティそして福祉用具といったサービスを選び、買うという時代になった。これは介護保険導入に伴い高齢者福祉事業が社会福祉法人の独占事業から、NPOや一般企業の参入という規制緩和策がとられたことで、競争という市場原理が働くようになったためである。
 しかし特養ホームは、まだ社会福祉法人の独占事業で設置の規制も強く、ひとつの施設待機者が数百名という売り手市場である。そのため、ケアの質を問う市場原理のメスは入りにくいままであった。ところがここに来て個室型ユニットが特養ホームに導入され、利用者がホテルコストを負担することになってはじめて、主客が逆転することになった。 かつての「要介護老人」はお客様になり、「介護者」は介護労働提供者に位置づけられた。「ご利用者様」というどこかおもはゆい呼び方も聞こえるようになった昨今である。
 このような中、特養ホームの「ユニットケア」にまつわる設計の説明会や研修会があちこちで開催されており、来年度の開設を予定している我々もその渦中にあるため、東京や、仙台に出かけて最先端の情報を求めてきた。しかし残念ながら、我々の琴線に触れるような「個室ユニット特養の展望」にはまだ出会えてないように思う。それどころか、日本の介護研究の最先端である組織の、ユニットケア推進部門のトップの講師の話でも、当たり前の生活とは、「食べる・出す・ねる、そして風呂」と定義して講義を展開されているのを聞きながら、強い違和感を感じ胸がもやもやと苦しくなった。(このときは「居眠り」の手法で乗り切って、我ながらあっぱれと思ったのだが・・・。)
 つまり日本の福祉は今だに人間や人生には焦点が当てられておらず、管理一辺倒で終始してしまう現状にあるのではないか。管理は大切ではあるが、それで終わってしまっては、個々の人生の総仕上げの時期を共に過ごす現場としてあまりに表面的で薄っぺらになり、もったいないと感じてならないのである。 続く
 
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