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今年のジャガイモの種まき【2008.05】

グループホーム第2 板垣 由紀子
 

 毎年、冬を越して春のこの時期、畑にジャガイモを植える。グループホームの高齢者とワークステージのワーカー、職員スタッフと揃って畑に立つ。新人は、初の農作業。


 4月9日、天気に恵まれ、新人スタッフもつなぎ姿がさまになっている。グループホーム第2からもリフト車に車いすの人たちも乗って、利用者5名とスタッフ2名で畑に向かった。畑に立つことは難しい人も、ドライブ気分で出かけ声援を送りたい。
 畑では車の中から見る人、ベンチに座って様子を眺める人、頭に手ぬぐいを巻きつけ畑に入る人など、高齢者の動きも様々だ。始めはベンチで見ていた シノさん(仮名)が様子を見ていてたまらず動き出す。スタッフに手を引かせて畑のなかに入っていく。腰の曲がったシノさんだが、畑にしゃがみ込んで、耕した土に残った草を集め始めた。
 それを見て、亡くなったサトコさん(仮名)の一言を思い出した。「わがねちゃんと根っこまで取って土ほろがねばすぐ根張って草だらけだ、こったに実が付くまでおがしたら、草の種こぼれてしまうんだ。」畑に草は大敵なのだ。みんなさすがだ。
 隣ではワーカーさんが種芋を運びながら黙々と作業をしている。その隣で武雄さん(仮名)が棒を持ってサッ、サッーと線を引き始めた。それを見た若いスタッフが「 武雄さんもベラベラとやりたいんだね。」と笑う。“ベラベラ”とはサチさん(仮名)の口癖で、いつも「ベラベラとやるのっす」とゆっくりな人を見ていられず急き立てる言葉だ。
 突っ立ている人の多いのに苛立った武雄さんが。「印つけてるんだから、誰かジャガイモおいてってよ。」と叫ぶ。職員スタッフがそれに応じるが、 武雄さんのスピードについて行けず音を上げている。そこに農家出身のワーカーの司さんが助っ人で入り、武雄さんとペアを組みいい感じで種芋を植えていく。
 今年もジャガイモの種まきが終わり、畑ではにぎやかに順調に作業が進んだ。あっという間に植えられて見事だったのだが、どこかで私は違和感があった。何かが違う。作業は終わったが何かがたりない。
 武雄さんが働いている。しかし若者にはその意味が伝わっていない感じ。新人スタッフは意味がわかっていないと思った。大事なことが伝わらない感じ。一緒にやっているけど解ってはくれない感じ。一緒に何かをすると言うこと。一緒に生きるということ。それを伝えたかった 武雄さんだが、時代は武雄さんを置いていってしまったかのように、若者は忙しく、その気持ちを理解できないどころか疎ましく感じてしまう。理解していたら自分が生きていけなくなってしまうかもしれない。『仕事=効率=成功』という図式が現代社会、そこで加わる高い圧力の中でそだってきた若者達。


 

 生きると言うことはすごいことで、そこには大切な何かがあるはずなのだけど、ジャガイモの定植はただのイベントに堕してしまうのも簡単なことだ。そもそもジャガイモを植えるのは何のためなのか、“生きる”というリアリティを今どこに求めたらいいのか?若くはない私の頭はグルグルしてくる。
 そんな私も、グループホームに戻って救われた気持ちになる。
 「ただいま。ジャガイモ植えてきた。」と帰ると、車いすのハルエさん(仮名)が「ごくろ〜さま〜。」と笑顔で迎えてくれる。「やってらな〜もう終わる頃だべ、ご苦労さん」と豊さん (仮名)。サチさんが「わたしゃ〜♪」と歌で応援してくれる。
 すごいなぁ〜畑に入った訳でもないのに一緒に仕事している一体感。高齢者のこの眼差しの力。新年度、始まったばかり、いつかどこかで若者と高齢者の両者が出会ってそして何かが生まれてくるはず。それを信じて、私も深い眼差しで新人を見守っていきたい。
 毎年、新人が入ってきて新しい風が吹く。彼らには今しかない新鮮さがある。この時期だけの緊張感や戸惑いだから、大いに感じ大事にして欲しい、そのドキドキ、ハラハラ、ワクワクを。
 
 
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