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にぎやかなおやつ作り【2008.04】

デイサービス 藤井 覚子
 

 デイサービスではほとんど毎日おやつ作りをして楽しむ時間がある。利用者さんの中には3時のおやつを楽しみにされている方も多いので手はぬけない。
 この日のおやつはきな粉ボーロ。おやつの準備を始めると、自然とみんながテーブルに集まり始める。ところがいつもなら「手伝いますよ。何をすればいいの?」と積極的に声をかけてくる サエさん(仮名)が今日は目をつぶって黙って座っている。
 どうしたんだろ?具合悪いのかな?と思って心配になる。そのうちサエさんの目の前に座っていた昭さん(仮名)が食べ物に手を伸ばしはじめる。私が「まだだよ、もう少し待ってけで」と慌てていると、それまで黙って座っていた サエさんが「男の人は黙って待ってるの!」とガツンと言いながら、昭さんの前に立ちはだかる。
 それでスイッチが入ったかのようにサエさんはおやつ作りに加わる。そうこうしているうちにレイ子さん(仮名)が「もうちょっと良く見せてちょうだい」とおやつ作りを見に来る。「ねぇちゃん混ぜてやるから」と 正志さん(仮名)も手伝ってくれる。生地を丸める段階になるとレイ子さんは「あんたはいいから早く丸めて!」と監督さんになって、みんなの動きに指示をし始めたりして、いろんな人が加わりおやつ作りが段々にぎやかになる。
 「砂糖はこれくらいかな?」と聞くと「もうちょっと」「いいあんばいだ」と意見が出る。作る人もいれば監督のように指示する人、出来上がりを楽しみに見守る人とみんなに役割がある。みんなで作るおやつは大きさも形もバラバラなのだが、バラバラだからおもしろくあじがある。今時バラバラのほうが貴重だと思う。
 レシピを頼りに毎回おやつ作りをしているのだが、時には作っている途中にユリ子さん(仮名)が本を持って行ってしまったり、誰かが電気コンロのコンセントを抜いていたり、順序どおりにいかないことは日常茶飯事である。
 そんなドタバタした中でもみんなで作ったものを共に味う喜びは大きい。「この味付けはレイ子さんだね」と話しながら「おいしかった」「何とも言えない味ですね」といわれるとやっぱり嬉しい。おやつ作りをしているとみんなが一体となってその場にいるように感じる。その過程の中には一人一人の役割のようなものがあり、そこからいろんな物語や会話が生まれてくる。これからもにぎやかなおやつ作りからどんな味と物語が生まれてくるのか楽しみだ。


 

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