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いつの間にかテーブルに集まって…【2008.03】

グループホーム第2 板垣 由紀子
 

 節分の豆まきが終わり、残った落花生をただ食べるのも芸がない、ピーナツみそを作ろうかということになった。作り方は?「お母さんがつくってた」丁度その日の勤務が、岩手、山形、青森と出身がバラバラで、それぞれのピーナツみその作り方で盛り上がった。
 結局、青森出身の伊藤スタッフの手作りの方法で「作ってみよう」ということになった。
 テーブルに豆を広げ利用者もスタッフもみんなで殻を剥き始める。いつも「小馬鹿たれ」と誰かを怒鳴っているサチさん(仮名)も、夢中で剥く。時々口にぽいと放りながら剥く。向かいでは守さん(仮名)が剥いたはしから全部食べている。サチさんが剥いたのを守さんが食べてしまうのではと気が気ではない思いで、私も隣に座って殻を剥く(気づいたら一気に食べられてしまう)。豊さん(仮名)は口で殻を割りながらこれまた食べるのに一生懸命だ。
 そのうちいつも豊さんがテーブルを叩くと「うるせ小馬鹿たれ」と罵るサチさんがテーブルを叩いてピーナツを割り始める。「景気いい、豪快だねサチさん」とスタッフも乗る。
 


 

 別テーブルでこの様子をみていた久子さん(仮名)を誘うと、いつもなら「ここさ持ってこ」というのだが、この時は自分から椅子を押してきて、みんなの輪に入る。「何たらおめ食ってばりで」と隣になった守さんに一言言ったが、「こぼさねよにな」と柔らかい言葉をかける。 「私ココア入れてきますね。」3時近くなるとスタッフの一人が、こびる、という感じで自然にみんなにお茶を出す。そんな中最後は“食べる”一筋だった豊さんが、軽く砕いたピーナツをすり鉢でする。伊藤も実家のお母さんに電話をして調理方法を確認して仕上げ、夕食の卓に一品として上がった。
 


 

 普段は、利用者それぞれが居室にいたり、歩いていたりと、個々で過ごすことが多い。ところが今回はみんな集まってなんだか楽しかった。意図してやったことではなかった。スタッフの興味から、やってみるかになり、やろうやろうと気持ちがひとつになった。このとき、伊藤が、母の味を“作ってみよう”と積極的にやり始めたのが大きい。母親がいろいろ作って食べさせているという環境も、それを自分もやってみようという伊藤の姿勢も何か温かいものを感じる。こうしたことがなかなか受け継がれづらい世の中で、グループホームを通して受け継がれていく感じもいい。
 何事もやってみよう、やってみたいという気持ちあることが大事だ。気持ちが入っているからこそ、見ている人を引きつけ、いつの間にか参加させてしまったのではないかと思う。気持ちが入っているかどうかは大きな鍵だ。認知症の方とのアクティビティとなればなおのこと、本気が無ければ通用しない、認知症の方は理解できないのではなく、本気や本物でないと通じない、本質を見抜く力を持っていると実感させられる。


 

 
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