トップページ > あまのがわ通信 > 関わりに戦いゆく魂

関わりに戦いゆく魂【2008.02】

グループホーム第2 板垣 由紀子
 

 銀河の里では個別のケース会議を頻繁に行う。それは問題解決という視点ではなく、プロセスを捉え、目的論的視点(何のために今これが起きているのか、どんな意味が隠されているのか)で見極めようという姿勢がある。問題とされるような事は、だいたいがその人に迫る“窓”として存在している。そこでエピソードを丁寧に取り上げ、その人に関して見えてくること、テーマ、スタッフとの関係性、全体の流れなどを話し合う。
 最近、桃子さん(仮名)のケース会議に出て印深かったのは、若いスタッフの純粋でひたむきながら、表面に甘く流れない腹の据わった姿勢だった。
 利用者桃子さんは、“世間様”を生きていて、“毒”をはきながら周囲を傷つける言動が目立つ。渋くなったドアに油をつければ、油を撒いて殺そうとしたとか、お風呂がぬるかっ たら、水風呂に入れて殺そうとしたとか話が広がり、周囲の心配りはことごとく仇になって、逆襲されてしまうのだからたまらない。関わった者は深く傷つき、関係はかなりきついものになる。そんなエピソードを客観的に聞きながら、 桃子さんは不器用で、孤独で、他者との関わりも、媚びて繋がったり、はねつけたりと裏腹さをもち、本当は繋がりたい寂しさ、甘えがあると感じたのでそう発言した。
 すると現場で桃子さんと日々向き合っている当事者の前川さんが言う。「とにかくヘロヘロになる。カーッとなる。何か深いところで繋がれるものがあると信じたいけど、今は分からない。とにかくぶつかってしまう。」と言った。
 現場の苦しみと傷つき、それをごまかすことなく受け入れ、正面から向かおうとする姿勢と、その純粋なこころにふれた心地がして感動した。自分を総動員してひとりの人間に向き合っていくありようは、そのまま自分自身との向き合いそのものだろう。
 関わりを失った現代ながら、グループホームではこういうことが起こりうるという希望を感じる。表面的に捉えれば、相手に共感し、ゆったりした言葉と態度でと教科書的な正解が優先しそうだ。私も自分の子どもに正解を押しつけて、心を無視してしまっていることが多々ある。子どもは大泣きしたり、無視したりして訴えてくる。
 現場で真剣勝負に本気で相手に向き合うからこそぶつかったり傷ついたりする。そこで福祉の仮面をかぶって客観的に受け流しても、見透かされてしまって、その場をうまく逃れても、プロセスは何の進展をもたらさない。苦しんだり悩んだりせずに、さらりと、クールに生きることがカッコいいと受ける時代のようだが、薄っぺらでいただけない。
 ここで前川さんが言った、“信じたい”との思いに賭けたい。そこから何かが生まれてくると思う。
 私もこの職場で5年、利用者との出合いに支えられて来た。自分を出すことの難しさ、怖さ、今も日々、自分を賭けた勝負だ。日々奮闘を続ける里のスタッフに、共にがんばろうとエールを送りたい。
 
〒025-0013 岩手県花巻市幸田4−116−1
TEL:0198-32-1788 FAX:0198-32-1757
HP:http://www.ginganosato.com/
E-mail: