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ショートステイの出会い【2008.01】

グループホーム第1 山岡 睦
 

 ある日、遅番で出勤した私は、スケジュール表に“昭さん(仮名)ショート(ショートステイ)”と書かいてあって不安になった。昭さんは、どこか近寄りがたいイメージが強く自分に気合を入れなければならなかった。
 ご飯の準備が出来、デイサービスで待つ昭さんを迎えに行く。「どうも、昭さん。ご飯の準備が出来たので迎えに来ました。」と言うと、「お嬢さん、名前は?」と話しかけてくれた。「山岡といいます。」と答えると、「山岡テッシューか」と言う。「テッシュ?ティッシュ?」と私は何のことなのかわからず、しどろもどろ。そんないきなり来た私に対して警戒心を抱くのではなく、何度も名前を聞いてくれた。
 前回のショートの時は、慣れない場所に落ち着けず、「行くぞ!」と何度も立ち上がっては歩いていた。だが今回はどこか落ち着いている。食事を終えた昭さんと一緒にソファーに座る。「行くぞ」と言う昭さんに、「今日はもう遅いので私は行きません。明日なら・・・昭さんも明日行きませんか?」と返してみる。すると「うん」と頷きそのまま居てくれる。前回は振り払ってでも立ちあがって歩いていたので、ちょっと拍子抜けしてしまう。
 私はなんとなくそのまま座っていたくて、その場を離れずにいた。するとポンっと私の膝に昭さんが手を置く。その上に私も手を置いて「昭さんの手あったかい!私の手、冷たいでしょう?」と言うと、私の手を掴んで「孫の手だな」と呟く。孫か・・・まだまだ子供ということかもしれないけれど、身近な感じで接してくれるのが嬉しかった。その後の「行くぞ」「明日行きましょう」という会話を繰り返していたが、次第に「行くぞ」が「寝るぞ」に変わり、そのまま布団に入った。やりとりをしながら安心感を持ってもらえたように感じた。
 翌日も一緒にソファーに座ってTVを見ていた。急にバンッ!と平手で背中を叩かれた。「何ですか?」言うと「按摩だ!」と言う。「おぉ!実は私肩こりひどいんですよ。気持ちい〜。」と言うと、「うん」と笑みを浮かべながらバシバシと何度も叩いてくれる。かなり強い力だけど、優しさが込められている気がして心地よい。少しずつ、昭さんに対する自分の気持ちも変わっているのを感じていた。
 しばらくすると今度はじっと私の顔を見て「先生、何歳だ?」と言う。「23歳です。」「結婚した?」「まだです。」「未婚!」「はい(笑)」「誰か・・・将来性のある男紹介してやる」「え、ほんとですか!?ありがとうございます。お願いします。」「うむ。」私はなんだかちょっと気難しいおじいちゃんと将来の話をしているような気持ちになった。
 今までのショートで、昭さんとこんな風に話をしたことがなかった。いや、私が話そうとしていなかったのかもしれない。今回、昭さんが私の緊張の糸をほぐしてくれた。
 ショートステイは数日しか関われない。でもこれも一つの出会い。毎日続けて関わることは出来ないけれど、短い時間に会話を重ねて、お互いの心の中に何かが生まれたら、それはすごく意味のあることだと思った。次のショートステイではどんな話ができるかな。

 
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