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縁の下の義男さん【2010.09】

デイサービス 小田島 鮎美
 

 7月から新しくデイサービスの利用を始めた義男さん(仮名)。まだ2ヶ月ほどだが、すでにムードメーカーで、中心的な存在だ。大きな体に、トレードマークのぽっこりおなかをぽんぽん叩きながら「妊娠8ヶ月!おぎゃーおぎゃーおぎゃー」とみんなを笑わせてくれる。ピアノ演奏に合わせて腹踊りやユーモア溢れる創作ダンスをしてみたり、ひょっとこの真似をしながら、太鼓の音に乗って畠山さんと踊ったり場を盛り上げてくれる。剛さん(仮名)が「風呂まだがー!?」と脱衣場のドアを開けそうになったとき、藤井さんがあわてて「まだだよ、女の人だよ!」と必死に声を張り上げていたとき、浴槽にゆったりつかりながら「女の人よ〜」と義男さんの声が聞こえてきて大笑いになった。スタッフの心に、ふっと余裕を持たせてくれる存在だ。
 日中は、活動に参加というよりも、『仕事』という意識で取組んでいるようで、稼ぐ義男さん。「これやってみよう」「手伝ってけで」とスタッフがお願いすると、「どうやるの?」とやり方を聞いて、とても真剣に取組んでくれる。あまり気分が乗らないときでも、頼まれると断れない一面もあるようで、茶碗洗いや、洗濯物干し、カレンダー作り、看護師のそばに座ってバイタルを読み上げてくれたりと、なんでもこなせる義男さんだ。紙の切り方ひとつとっても、紙をきっちりたたんで折目をつけ、曲がらないように片方の手でしっかり押さえ、几帳面に切る。
 私がおやつ作りでバターの計量をしながら「だいたい160グラムだからいいな」とつぶやいていると、隣で見ていた義男さんが「あと何グラムだ?ちょっと貸して」と残っているバターの塊を目分量で切り、ボウルに乗せるとピッタリ160グラムだった!目分量にもかかわらず、その繊細な感性に驚いてしまう。昼食を急いで終えると午後は義男さんの時間になる。部屋を探してグループホーム1や里周辺を散策する。そのうちフキ採りになったり、「家さ帰るかな」となったり、歩きながら目的はさまざまに変わるようだ。山歩きが好きだったとのことで、歩くことで想いが解消されるのかもしれない。フキ採りになると「そっちは危ないよ」という声も届かないほど夢中になってしまう。大量のフキを穫るのだが、後日「かでくてだめなんだ」「わだしは、こういうフキは採らないよ」「ずいぶん細いな」等々、収穫した本人も他の利用者さんからも不評を受けたフキだったが、醤油とみりんで煮付けて昼食に出したら苦味もなく、とてもおいしく出来上がって「案外おいしいな」と義男さんも驚いた様子だった。
 ところで、収穫したフキをゆでてアク抜きし、皮をむいて煮付けるという体験は、私にはなじみのないことだったため、やり方を教わりながら見よう見まねでやってみたのだが、けっこう楽しく、煮付けも美味しくて感動してまった。おおらかな心と、場を和ませてくれるユーモアセンスを持って、どっしりとスタッフを支えてくれる義男さん。義男さんに守られていること感じつつ、自分自身も守る側として成長していきたいと思う。


縁の下の義男さん
 

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