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里の癒し系☆のりちゃん【2010.08】

グループホーム第2 米澤 里美
 

 里に住むのりちゃん(仮名)は、「どう?いい?まる?」と銀河の里の全部署を回り歩いて、お気に入りのスタッフに質問する。自分の顔色がどうなのか聞いているのだ。ワークステージの仕事の前後に特養、グループホーム、デイサービス、事務所をくまなく渡り歩いて、さっき事務所にいたかと思うと特養ホームに来ていたり、のりちゃんのテリトリーは広くて、すばやい。スタッフの勤務表を熟知しており、今日は誰がどこの勤務かよくわかっている。もしかして里のスタッフよりも全体をよく見ているのかもしれない。
 とにかくのりちゃんは神出鬼没である。朝から夜中まで、気になることがあると、人に問い続ける。「〜していい?」「〜したら迷惑?」と何ともソフトな口調でしつこく聞き続ける。私が車に乗ると、気づけば隣にはのりちゃん。発車してでも追いかけてきて「夜中に電話したら迷惑?」などととにかく質問攻め。私は8月出産予定で産休中なのだが、会えば「車の支払いはいつまで?」「産休中の生活費はどうするの?」など私の生活まで心配してくれて、のりちゃんの気になること、心配事は多岐にわたる。
 のりちゃんとお隣さんである施設長、理事長宅は、夜中に「ピンポーン」とチャイムが鳴るときが多い。あまりに思いつめすぎて、理事長が自宅で入浴中に「帰ればいい?」と浴室にお邪魔してしまったこともある。 ここまでくると時間を問わない突然の神出鬼没訪問は勘弁願いたいところだが、そんなのりちゃんに、密かに癒しを感じているスタッフは少なくない。
 突然現れては、お目当ての人が取り込み中であろうと何しようと、肩をもんでくれたり、「かわいい、かわいい○○ちゃん!」と頭をぐしゃぐしゃに撫でてくれる。お腹をすかしていると「〜食べる?」と聞いてきてくれ、ご飯を食べさせてくれたり、コーヒーを淹れてくれたり・・何かと尽くしてくれるのりちゃんだ。
 心底心が疲れているとき、のりちゃんに会うとホッとする。世間に出て渇いた社会を実感したとき、心が擦り切れそうになったとき、会えばかならず近づいて「どう?まる?」と聞いてきてくれるだけで、何か救われた気持ちになるのは何でだろう?
 聞いてくることは自己中心的だし、しつこいし、相手の都合は考えないし(仕事中だし)、迷惑行為と枠にはめてしまったらそれまでなんだけど。そんなのりちゃんになんで癒されちゃうんだろう?
 のりちゃんは、里中を歩き回っては、人を逃さない。人を見ている。人を感じている…
 現代人は、お互い知らんぷりの関係で、「関係ありません」「別に」となるべく、人と関わらないように、感情出さず、迷惑かけないように、付き合っている。ところが、のりちゃんにはそれは通用にしない。のりちゃんとは関わらないわけにはいかない。圧倒的に、そして熱烈に、のりちゃんから関係を求めてきてくるからだ。そんなのりちゃんってすごく潤っているな、と思う。そして、男性でありながらすごく母性的だな、と感じる。のりちゃん流のだれも逃れられないスーパーコミュニケーションがあるのだ。そんなのりちゃんはいつも里を見回していてくれる観音菩薩だと思うのはいきすぎだろうか?!


理事長のマッサージ♪
 

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