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誕生日おめでとう・・・・二人だけの温泉一泊旅【2010.05】

グループホーム第2 北舘 貞子
 

 「より子さん(仮名)、今年の誕生会どうする」 4月に69歳を迎えるより子さんに聞いてみた。 「う〜ん、去年は鰻をお腹いっぱい食べて太っちゃったし・・ご馳走食べるだけもつまんない。 フランス料理のフルコースは絶対ダメだって医者に言われたし・・ 温泉がいいな、温泉に浸かってのんびりしたい。貞子ちゃん連れてってよ」
 食事制限があるのだが、食べる事とお出かけが大好きな彼女。いつも「此処の食事は不味い、もっと美味しいもの食べたい」と言っている。食べ過ぎが気にかかるが、目を細くし「行きたい」と期待の笑顔のより子さんと出かけることにした。行き先は鶯宿温泉偕楽苑。


 26日誕生日当日夕方「いってきま〜す」と銀河の里を出発。音楽が好きでディケアでもコーラスをやっているより子さん、車中流れる音楽に合わせてリズムを取りながら歌いながらいい雰囲気。「夜勤明けでしょ。疲れない?」と優しい言葉をかけてくれる。
 途中「まだ、紫波なの」「盛岡だね」「あっ、雫石だぁ、後少しでしょ」とより子さんの気持ちは車より早く温泉に向かっている。「私、鶯宿温泉始めてなの。ご馳走たのしみ フフフ・・」 「えっ、温泉じゃなくそっち? 」と私。「フフ・・だってぇ、今晩の為にお昼ご飯控えたから お腹空いたんだもん」
 一時間程のドライブで宿に着き、まずは食事を取る。メインは「前沢牛のしゃぶしゃぶ」。盛り沢山ではなかったけれど程よくお腹いっぱいで、ヘルシーな感じの食事に大満足。食事後お部屋でくつろぎながら「久しぶり。何年ぶりかなぁ、こんなにのんびりしたの」とポツリと呟くより子さん。
 宿に着いたときから、より子さんの表情は柔らかく穏やかに変わったのを感じていた。出会ってから1年だが、そんな表情を見たことはなかったので驚いた。
 温泉に入った後、布団の上に座りテレビを見ながら、何かを考えているのか、表情は穏やかな笑みを浮かべていた。何を考えているのだろう。「もう吹っ切れたから」と言うものの、今でもより子さんが大切に思っている亡くなった旦那さんのことなのか、昔の思い出なのか・・・そんな彼女に、私は言葉をかける事も出来ずにいた。
 これまでの人生を思い起こしているのかな。そのままかなり長い時間(私はそう感じたのですが)が過ぎたように感じた。しばらくして突然「あぁ・・テレビ面白くない。貞子ちゃんコーヒー飲む? 眠かったら寝ていいよ。」と話しかけてきたより子さんは、面倒見のいい母親の様な暖かな表情だった。「来て良かった。」とその瞬間に感じた。


 翌日、朝風呂に浸かり、「おかずいっぱいだから」とご飯をお代わりしたあと、のんびりと窓の外の景色を眺めながら「あぁ、楽しかった、又どっか連れてって頂戴」と話すより子さん。 里が近づくと「帰りたくねぇ、飯は不味いし煩いし! 」と何時ものより子さんに戻る。 この旅行で私はより子さんにとって、里のスタッフではなく友達か、子供であったのかも知れないなと感じた。
 この1年、何度もより子さんと買い物やドライブに出かけた。その度に旦那さんや子供さんの話をしてくれた。でも今回の旅行ではそんな話は一言も出なかった。どうしてなのかよく解らないが・・・兎に角、大いに楽しんだ、女二人の温泉旅行だった。(^−^)  
 

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