トップページ > あまのがわ通信 > 銀河リンゴ植樹式を終えて


銀河リンゴ植樹式を終えて【2010.04】

事務 米澤 充
 

 今年1月下旬、理事長より「特養北側の農地にリンゴを植える。」と話しがあった。リンゴ農家の婿の私だが、まだ収穫の経験しかない。リンゴを1から育てて実をならせる事が出来るのだろうか…、自分の家(以下、米澤家)のリンゴ栽培もままならぬのに…、リンゴの苗はどうすればいいのか…、などと解らないづくしで始まった。
 ちょうどその頃、目標工賃達成指導員として菊池さんが2月に入社した。菊池さんは農学部出身で農業指導員もやってきた「農業のプロ」で、自身がリンゴ農家でもある。菊池さんの参入は銀河の里リンゴ戦略には大きな力となった。私を含めスタッフ3名とワークステージの畑班7名でリンゴ部隊が結成され、まず100本の苗を植えることになった。
 まずは練習も兼ねて米澤農園で30本の苗木を植えた。私を含めみんな植樹が初めてで、菊池さんの説明を真剣に聞きながら、いつもと違った、真剣な表情だった。
 さて、銀河の里のリンゴ園は複雑な傾斜で、粘土状の土に岩石が混じっており、圃場整備は困難を極めた。スコップも刺さりにくいため、バックホーで畝を掘りおこし、そこから出てくる、直径30cm〜50cmの石を一輪車で運搬するのが特に大変だった。それは農作業というより、まるで建設工事だった。
 そうした我々の作業の様子を、特養のユニットの祥子さん(仮名)が毎日ジッと眺めている事に気づいた。祥子さんは、夫婦でリンゴ栽培をやってきた人だった。品種によって管理が異なること、剪定や摘果などリンゴ栽培は手間暇がかかる、など色々と話してくれた。私は祥子さんにもぜひ植樹式で苗を植えて欲しいと思った。


 植樹式にみんなが参加できるようにと、歩ける利用者には事前に伝えリンゴ話に花を咲かせた。また、デイサービスではリンゴの品種名の看板をスタッフ共々作成してもらい、当日畑に掲げてもらうことにした。さらに中から見学の人たちにも植樹式に参加してもらう意味で式をおやつの時間帯に合わせ、リンゴジュースとリンゴのおやつ(蒸しパンとケーキ)で過ごしてもらうことにした。
 リンゴの植樹は50本ずつ、2日に分けて、第1回目は4月1日に行った。小雨の降る中、数名の高齢者とワークステージの利用者とで植樹を終えた。しかし祥子さんは畑には出ず室内から見守る程度だった。第2回目は4月6日だった。この日は天候にも恵まれ、グループホームやデイサービスの利用者のほか、特養の利用者も車椅子で応援に駆けつけてくれた。前日の雨で足元が泥で抜かるにもかかわらず、がんがんと掘って植える高齢者には驚かされた。いつもおとなしい感じのクミさん(仮名)が、「そこのおんばさん、私ここの土をくだくから、あなたはそれをかけてればいいの!」と指示を出すのでワークステージの利用者も驚いていた。
 祥子さんもこの日は畑に出てきてくれたが、長靴ではなく普段の外履きで、作業をしに来たと言うより、観察をしに来た感じだった。すこし様子を見て特養の中にと戻ってしまった。 後で、「祥子さん、植樹どうだった?ここで良いリンゴなるかな?」と聞いてみた。すると「作業している人には申し訳ないけど、あったな粘土じゃダメなんだ。石もたくさんあったっけしな。あんな所じゃ根が伸びず、肥料も通常の3倍かかるんだよぉ。ありゃ大変だ。リンゴはならないんじゃないかな。なっても小さいと思うよ。出荷できない品質だな。」と厳しいコメントだった。
 19歳から何十年もリンゴ農家で稼いできて、リンゴ栽培の大変さを分かっている祥子さんの心配は深い。でも私は何とか頑張って、粘土と格闘し、3年後の収穫に向けて、安心してもらえるようなリンゴを作って見せたい。
 

あまのがわ通信一覧に戻る

このページの上部へ


〒025-0013 岩手県花巻市幸田4−116−1
TEL:0198-32-1788 FAX:0198-32-1757
HP:http://www.ginganosato.com/
E-mail:l: