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巡り巡った97歳【2010.04】

グループホーム第2 佐々木 詩穂美
 

 「もうすぐ誕生日だね」私は一週間前から3月26日に97歳を迎える豊さん(仮名)に呼びかけていた。「今日は何日だ?オレの誕生日忙しいな、みんな来るから10人分頼んだよ」といつものようにテーブルの周りを巡りながら豊さんは話してくれる。
 97歳か〜‥20代前半の私には計り知れない未知の年齢だ。考えれば考えるほどすごい!一生に一度の97歳を一緒にお祝いできるのだから「おいしいのたくさん食べようね」と私もはりきって、豊さんが大好きなお寿司屋さんに行く計画を立てた。
 プレゼントは何にしようかな♪もうすぐお花見の時期なので帽子とかセーターとかお出かけセットがいいかなと、私は買い物に出かけた。しかしいいと思う物は値がはり、予算内に納まらない‥悩みに悩んでプレゼントを選んだ。
 誕生日当日は豊さんのお孫さんもご一緒してくれることになり、いい誕生日になりそうだと意気込む私だったが、主役の豊さんは朝から眠ったままだった。出かける夕方まで、あえて声をかけず、充電中の豊さんを待つことにした。いつも気持ちが通じる豊さんは、出発30分前に起きてきて「うっちゃ帰るよ〜」と出かける準備をし始める。すごい!車椅子がいらないほど軽やかにスタスタと歩いて、気持ちも誕生会に向かっていた。
 回転寿司の席につき、1本しかない歯で勢いよくお寿司を食べ始める豊さん。お孫さんも隣に座って「じいちゃん、おいしい?」に「うん」と一言。勢いのいい食べっぷりにみんな驚かされた。お孫さんの前のお皿まで手がのびる豊さんだったが、温かく見つめるお孫さん。その微笑ましい光景に心が温まる思いがした。
 お孫さんから豊さんにプレゼントが渡される。そのプレゼントを見て私達も思わず「あ〜!!」歓声が沸く。欲しかった新しい帽子・セーター・スリッパと全部お孫さんからのプレゼントに詰まっていた!どうして分かったんですか?私がプレゼント選びで諦めたものがお孫さんのプレゼント!!その一致に「あ〜!!」と驚き「ありがとうございます」と感激。
 豊さんは、里に帰ってきてからもプレゼントの帽子をかぶっていた。「似合うっか?」と言うので「うん、似合ってるよ。お孫さんからのプレゼントね」と返すと「いい孫だべ、ハハ〜」と嬉しそうに笑う豊さんだった。翌日も帽子をかぶって廊下を巡る豊さんの姿に、心に残る97歳の誕生日になったに違いない。一緒に迎えた豊さんの97歳の誕生日は、私の心にも残る誕生日となった。


寿司をペロリ



孫さんからの贈り物
 

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