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今月の一句 『十五夜の夜』【2009.11】

グループホーム第2 鈴木 美貴子
 


十五夜の 流れる雲に まわる月 今年は月に 見たよと伝え 

満月に 拝んで祈る 夕まぐれ 願いも届く 黄昏の夢

あの頃は 大きな月が 昇ってた 老いたる今も 月光あびて

 

 10月3日は十五夜の月だった。天気がよくなくてきょうはたぶん月は見えないかもと昼から話していた。でも、月見団子をつくり、ススキを飾り、お供えをして月がでることを願って十五夜に備えた。夕方、薄暗くなっても雲が立ちこめ月は見えない。夕食前に久子さん(仮名)がベランダに出て「見えねえな〜」と中に戻ってくる。
 去年は晴れて良い月が出たのだが、去年はよく見えなかったというコラさん(仮名)と夕食後に、「お月さん見るかな〜」とベランダへ出た。雲に月は隠れていたが、コラさんがベランダに出て空を見上げていると雲の合間からスーッと月が現れた。私は思わず「コラさん月が出たよ、見える?」と声をかけた。するとゆらゆらと首をあげて空を向いたコラさんだったが「見えたー。今年はよく見えた。」と叫ぶ。その後月を褒めるように「コラさんに見えるって言ってらったおんや」と微笑んで語りかけるコラさん。
 豊さん(仮名)もベランダに出てきて「どこ拝めばいいのや」と月に向かって拝み、久子さんもきて、さっきは見えなかった月がみえて「ほー、たまげた。」と一言。ベランダにみんなで並んでしばらく十五夜お月さんを眺めながら、炭坑節や十五夜の歌を口ずさむ。
 時々月は雲に隠れてが見えなくなってしまう。その様子をみてコラさんは「月がまわってら・・・。そう見える。雲の動きで」と言う。クミさん(仮名)は、「子供の時にはもっと大きく見えたった」「あれーお月さんでたー!って大きく見えたった」と遠くを見つめながら「うさぎうさぎ♪何みて跳ねる♪〜」と小声で歌っていた。
 雲間から挨拶してくれた十五夜の満月を、それぞれがいろんな思いを重ねて眺めていた。そのひとりひとりの思いを見通すかのように輝く月の光に私は感謝したくなった。
 


賢治歌碑を見て微笑む
 

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