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入浴コミュニケーション【2009.10】

デイサービス 櫛引 美里
 

 里に勤めて半年が経った。当初は入浴介助が限られた時間の中でこなさなければならないと大変さばかりを感じたが、最近ではそれがかなり違って利用者さんとのコミュニケーションの場として貴重な時間になっている。
 花子さん(仮名)は、たいてい午前中に他の女性利用者さんと一緒に入浴を済ませるのだが、たまたま午後に1対1でゆっくりと入ることがあった。そのとき仲の良かった歩さん(仮名)との出会いをしみじみと話してくれた。なかなかデイに馴染めなかった頃「ここには悪口を言う人もいるかもしれない、でも私は花子さんの味方だから」と歩さんが言ってくれたというのだ。それから2人の付き合いは深まっていったという。
 普段はいろいろ質問等しても笑顔と相づちしか返してくれない雄介さん(仮名)。お風呂で背中を流しながら話しかけていると「どこに住んでいるの?」と質問をしてきてくれた。それが私にはとてもうれしかった。1対1になることが多い入浴時間には普段とは違うことが起こり、違った面を見せてくれる。
 いつもは午前中のうちに入浴を済ませてしまうミチさん(仮名)だがこの日は微熱があったため午後まで様子を見ることになった。午後になり平熱に戻ったので、入浴に誘ってみる。普段は快く応じてくれるミチさんだがゆっくりしていたところだったし、午後ということで億劫になったのか「嫌んた!」と断られてしまった。私も負けじとしつこく誘ってみる。すると「わかりました、入ります。」と怒ってしまったミチさん。表情は固く、何もしゃべらず黙々と脱ぎ出す。午後の時間をゆっくり過ごしていたのに悪いことしてしまったなぁと感じ「しつこくてごめんね。」と言うと「(風呂に)入らなくて次から(銀河に)来なくていいと言われると困るから…。」とつぶやく。そんなことを言わせるつもりはなかったのに、私のミチさんにお風呂に入って欲しいという気持ちとミチさんの今はゆっくりとしたいという気持ちがぶつかってしまった。
 でも私の気持ちを酌んでくれたミチさんは「ごめんなさい。」と言って笑顔を見せてくれた。それから2人で話をしながら入浴をした。この出来事があったからこそ、ミチさんの気持ちに気づくこともでき、本人の気持ちも大切にしたいと感じた。
 私にとって1対1になることの多い入浴の時間は、利用者さんの新たな面を発見できる大切な場となっている。
 

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