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花壇作りで起きた小さな変化【2009.09】

デイサービス 小田島 鮎美
 

 ある日、花壇の花を植え替えようと、花子さん(仮名)、遠子さん(仮名)と一緒に外へ出た。花壇の土を、スコップで耕す。私自身、園芸は無縁で花の育て方も知らないので2人に教えてもらいながら見よう見まねで取りかかる。花子さんが、じょうろで土全体に水をかけ、湿らせたところに、みんなで苗を入れる穴を掘る。「背の高いのを、後ろに植えますか」とさりげなくアドバイスしてくれる花子さん。
 花の苗を1つずつ取り出して遠子さんに手渡すと、慣れた手つきで苗を植え、優しく土をかぶせていく。そこへチヨ子さん(仮名)もやって来ていすに座ってサルビアを植えてくれた。そうしてできあがった花壇をみんなで見て「かわいい!」と声があがった。
 その後、昼食までの時間、隣の花壇の整備をした。遠子さんが鍬で耕していたが、しばらくして「腰が痛いわ」とデイへ戻ってしまった。続きを花子さんが耕し私とチヨ子さんで花壇の草とりをしていた。花子さんの次に私が耕していると、なれないへっぴり腰に見かねたのか、いつもはほとんど歩けないチヨ子さんが「できるかできないかわからんけど、やってみる」といすから立ち上がり、鍬を持った。自分から活動に参加することのないチヨ子さんなので意外だった。鍬、大丈夫かな…と思ったが、いざ土を耕し始めると頼もしくさすがで、心配は一気に吹き飛んだ。
 耕すうちに、木の根っこがガツッと鍬にあたった。一生懸命根っこをひっぱっている。私も一緒にひっぱる。「うーんしょっ!!」と引っこ抜く。「こんなに長いの生えてたんだ」とびっくりする私をよそに、黙々と土を耕しているチヨ子さん。
 デイではいつもテーブル席で過ごしているチヨ子さん。手浴と手のマッサージ、お風呂が日課。周りのみんなの様子を眺めて過ごすことが多く、手のしびれが強い日には、両手を毛布でくるんで、じっと過ごしていて活動に積極的ではない。
 そのうち私が交代して鍬を使っているとチヨ子さんが「少し高くしておくと、周りの草が(花壇に)はいってこない」と、花壇の周りの土を整えるようにアドバイスをくれる。でも私の作業がイメージと違ったようで「おねぇちゃん、ちょっと貸して」とまたいすから立ち上がり、鍬でやって見せてくれる。「あぁ、こうすればよかったのか…!」こうやってチヨ子さん、花子さんと一緒に耕した土には、なんだかあったかみを感じた。
 外で太陽の光を浴び一仕事をしたあと、デイでチヨ子さんはお風呂に入った。表情もよく明るい様子だった。足取もいつもよりしっかりして手引き介助もいらないくらいだった。かるたも、札を次々と取っていつものチヨ子さんとは違って積極的だった。その変化を嬉しく感じながら、みんなで耕した花壇にどんな花を植えようかいうと楽しみにウキウキした気分になった。
 


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