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日々是旅人 〜バス送迎の車中より〜 【2009.07】

ワークステージ 佐々木 哲哉
 

 ワークステージの夕方のバス送迎を始めて一ヶ月たった。 夕暮れにはまだ早い田園を駆け抜け、石鳥谷駅や花巻空港駅などを廻りながら銀河の里に戻ってくる。車内には自宅へ帰る利用者さんのほかにも、銀河の里のグループホームに暮らしている利用者さんも同乗して、気分転換を兼ねて約1時間のドライブをする。
 いつも同じことの繰り返しだけれど、そんななかにもドラマがある。


 ほぼ毎日朝夕欠かさずに助手席に乗るサチさん(仮名)は、少しでも本人の気に触る音がすると「うるせっ!」と怒り、大きな振動や驚きがあると「おっがね!」と声を荒げる。
 そのおかげで運転は慎重になってよいのかもしれないけれど‥‥他の利用者さんまで緊張してしまうのが難しいところだ。ただ面白いことに、必ずしもラジオの音量や流れてくる音楽、利用者さんの会話など音の大きさが気になるわけでなく、サチさん自身が独自に持つ敏感な音や振動があるようだ。例えば運転席ドアの窓をピシッと閉めると(静かに閉めたつもりでも)、ラジオから偶然流れてきた激しいロック音楽など気にもしないのに突然「うるせっ!」と言われてこちらがびっくりしてしまう。


 それでも次の瞬間には怒りなどどこかへ行ってしまい「次はどっちゃ行ぐの?」、「ここはどこさ?」とニコッと聞いてくる。毎日同じコースなのに、サチさんには日々初めての道のりのようだ。さぞ新鮮なことだろうと思うと、羨ましくもなる。陽気なときには突然「とん、とん、とんからりんのと〜なり〜ぐみ〜」などといろんな童謡を唄ってくれたり、日差しが眩しいときには(やっぱり突然!)「帽子貸してけろ」と、農作業でうす汚れた私の帽子を何も気にせず被ったりする茶目っ気もあって楽しい。


 他にも、どちらかといえばお騒がせものだったり色々悩みを抱えている利用者さんが同乗するのだが、そんな利用者さんとサチさんが銀河の里に戻ってきたバスから降りて坂の上のグループホームまで一緒に手を繋いで歩いている姿を見ると、一日の疲れを一瞬忘れるほど和やかな気持ちになる。そこには自然体の温もりがある。


 ある日、朝の送迎を担当者の出張で私が交代した。 いつも通るルートを逆に廻るだけなのに見る風景はちがって映る。緑濃い田園風景はひときわ眩しかった。忙しい日々も、ちょっとしたことで新鮮な旅になる。


 暑い夏が、もうすぐやってくる。夏ノ暑サニモ負ケナイ「ワークステージ」で乗り切りたい。



車内から遠くを見つめるサチさん
 

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