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気づいたこと【2009.07】

デイサービス 櫛引 美里
 

 里に来て、3ヶ月。利用者さんの名前と顔も覚え、日々の仕事にもなじんできた。ところが作業をこなすことにこだわるあまり、利用者さんの言葉や行動の意味を想像したり、理解しようとする姿勢を失っていたことに気がついた。先輩スタッフに「右往左往しないで、どんと座っているとよく見えてくるものがあるよ。利用者さんに関心を持ったらいいんだよ。」と言われてハッとした。どこか作業を優先し、利用者さんへのまなざしを失いがちになっていたと気がついた。それから視点が変わるといろいろ見えてくるようになった。
 良夫さん(仮名)は一人でいる時間が多い。ある日おやつ作りを一緒にやってみたいと思い、声をかけた。「これ入れてちょうだい。」「これ混ぜてちょうだい。」とお願いをすると、とても丁寧に取り組んでくれた。私が席を離れている間も一生懸命作業をこなしてくれ、味見をしてもらうと「いいな」と笑顔で答えてくれた。おやつ作りを通して良夫さんの人柄に触れ、優しさも感じた。
 なかなか落ち着いて座っていられず、ホール内を歩き、周囲に対して「小ばかたれ!」「ドロボー!」と大声を出してしまう幸子さん(仮名)。当初は「なんでこんなに言うんだろう?」ととまどいでしかなかったが、ある日幸子さんの隣で食事をしながら、幸子さんの世界に浸ってみようと思った。ご飯を食べている途中で「早く!」と言い、立ち上がる幸子さん。「どこに行くの?」と聞くと「さくらまち」と答えてくれる。今は家に帰るイメージなんだなと解釈した私は「私も一緒に行っていい?」と聞いてみた。すると「いいよ」と私を連れて歩いてくれた。少し歩いて席に戻り再びご飯を食べていると、今度は鞄を取りに来た他の利用者さんに対して「ドロボーだよ!」と声が飛ぶ。幸子さんはここが自分の家で、くつろいでいるところに無断で入ってこられた感じなんだったら、“ドロボー”という言葉もいくらかわかるような気がする。デイサービスが幸子さんの居場所となっているのならそれは嬉しいことだ。
 今何が起きているのか全体を見ること、利用者さんと関わっているスタッフやその関係に関心を持つこと、自分も利用者さんの関わりを他のスタッフに見守ってもらうこと、こうした守りや支えがあって利用者さんと向き合えるのだなと感じた。個性あふれる利用者さんと毎日を過ごし、当初に感じた楽しさとはまた違った楽しさ、面白さを発見しつつある。
 


まだまだ天ぷら揚げるのあるよ〜

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