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銀河の車窓から【2009.07】

デイサービス 小田島 鮎美
 

 「おはよう」「あや、おめさん来てけだ」デイサービスの迎えに行く度に、勝手口で、歩さん(仮名)と挨拶しあう。彼女は一人暮らし。私とふたりで火の元の確認や戸締りをして銀河のデイに出発するのだが、出発するまでになかなか時間がかかる。“かぶるの持ったっけか”と、ジェスチャーを交えてわたしの目を見ながら話すので、どれどれとふたりでカバンの中をのぞく。“あったよ。大丈夫!”と一緒に確認して、歩さんは手ぬぐいをカバンに入れる。が、さあ行こうかというときに、その事がスッと消えてしまうらしく、また一緒に探す。(持っていくものを入れたかどうか、気にかかってしかたないんだ。わたしもそうだもんな。) 手ぬぐいなんて必要なの?と思う人もいるかもしれないけれど、歩さんにとっては草取り作業の必需品。自前の草取りガマや帽子まで持参する。
 歩さんはよく、“おれ、頭こう(パー)だから”と、すぐ忘れてしまうと笑いながら話す。でも、もしわたしだったら、そんな自分を笑って語ることなんてできないと思う。だから、歩さんのその一言を聞くといつもせつなくなる。と同時に、強さも感じる。
 勝手口であーだこーだとやりとり。時に、“おめさん朝早かったべ、おなかすいたでしょ”と、冷蔵庫を開けて、自分の畑で採れたたまねぎを渡したり、あらかじめ準備していたお菓子やら果物を、わたしの服のポッケになかば強引に入れたりする。 銀河でたくさんすけてもらってるから、と断っても、歩さんは一歩も引かない。遠いところまでわざわざ迎えに来てくれて、何もお礼にあげられなくてごめんや、という思いがあり、せめてもの気持ちとして、たまねぎやお菓子をちょっぴり強引に渡すのかもしれない。 デイでは、いろんな利用者さんに声をかける歩さん。話し上手で、聞き上手。ホールを歩いているスタッフにも、“座って休んで”“なにかすけることあるか?”と、声をかけてくれる。いたらないわたしを、孫のようだぁと可愛がってくれる。
 その歩さんは、グループホームに入居が決まり、デイの利用が終了する。入居の予定はあった方だったけれど、急だったので、何ともいえない気持ちになった。いつでも会えるんだけど…。もう歩さんの送迎に行くことはないんだなぁ…。デイのあのテーブルに歩さんの姿がないのを思い浮かべていた。寂しさもあるが、グループホームでこれからも続いていく歩さんの人生、暮らしを、見守っていきたいと思う。

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