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デイサービスデビュー【2009.04】

デイサービス 小田島鮎美
 

 銀河の里での1ヶ月が過ぎた。デイサービスの業務、1日の過ごし方、介護の技術、送迎等、仕事を覚え雰囲気にも慣れた。利用者さんの顔と名前も覚え、私なりのコミュニケーションのとり方を掴んできたところだ。福祉の職場で働くことが初めての私にとって、緊張、不安、発見、驚きの毎日。かかわりのなかで、自分自身の感情が揺れ動くのを感じている。


  週に1回、デイを利用している加奈子さん(仮名)に私が初めての入浴介助。前回、スタッフの入浴の誘いに「うるさい!」と怒鳴っていた場面が頭から離れない。どうしよう、とひるんでしまう私。誘うのが難しい。先輩の田代さんにアドバイスをもらうと、風呂という言葉は禁句で、昼寝から起きた直後トイレに誘導し、そのトイレが混んでいて使えないので流れで浴室のトイレへ誘うやり方でいくらしい。半信半疑のまま、まずトイレ方面まで行くことを目標に、チャレンジしてみることにした。
 寝ている加奈子さんにそっと声をかけてみる。パチッと目が開く。「ちょっと私に付き合ってもらってもいいですか?」目覚めたそばから何を言っているんだと、私だったら思うところだが「はいはいはい」と、加奈子さんがむくっと起き上がる。(えっ?!いいの?!)まず驚いた。スリッパを履き、しばらく手を引いて歩く。トイレが近づいてきた。「ちょっとトイレに寄って行きましょうか」「はいはいはい」。そこで協力者の田代さんが、トイレへ駆け込んできて「大変!もれる〜!」と迫真の演技。隣のトイレに体を向ける加奈子さん。「隣も誰か使っているみたい。向こうにもうひとつ、トイレがあるから行ってみて。」とさまざまな声かけが飛び交う。そんなどさくさにまぎれたまま、なんとか浴室へ到着し、いすに腰掛ける。ここまではきたが…ここからどんな展開になるのかと気が気でない。でもそんな私をよそに、いすに座った途端、何事もなかったかのように加奈子さんは服を脱ぎ始めるので拍子抜けした。いよいよ浴室(洗髪や体を洗うこと、拒否されるかな…)と緊張しながら、背中を流すが嫌がることもなく、終始ゆったりとした表情。湯船に浸かった加奈子さんに「気持ちいいですか」と話しかけながら肩に湯をかけると、「はいはいはい」と答えてくれて、あぁ、加奈子さん湯っこに入れてよかったなぁと、ほっとしたのだった。


 身体の清潔、血行の促進、皮膚など全身の観察、コミュニケーションの場…入浴ひとつとっても大切な意味合いがたくさんある。だから、入浴してほしいなと思うし、利用者さんが「気持ちいいなぁ」とほっとするひとときを過ごせたらと願っている。どんな方法でお風呂へお誘いしたらいいか。まずは個性を理解するところから始まるんだと、新たな発見だった。そして、試行錯誤しながら、方法をあみだす。すごい想像力とクリエイティブ。なんだかこれからがすごく楽しみになってきた。
 


マルカンデパートにて

 

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