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里の音楽祭〜コンテンポラリー・ジャズと里との出会い〜【2008.12】

グループホーム第1 前川 紗智子
 

 3年前、事例発表会で銀河の里を初めて知ったとき、それは只々「衝撃」だった。事例を聞きながら、訳もわからず泣けてくる。それが里と私の出会いだった。(その時はまだ)言葉では説明はできず、なにがなんだかわからないけど、とにかく“すごい”って衝撃だけが確かにある感じ。こうした銀河の里との出会いの衝撃は、私だけではなく他の人も似たようなインパクトがあるようだ。
 話は変わるが、今回、里の音楽祭でお呼びした荒井皆子さんの音楽も、里の出会に近い衝撃の感覚がある。音楽祭のメインとしてジャズ・ヴォイス・プレイヤーの荒井皆子さん、ピアノの板倉克行さん、ベースの林正男さんのジャズコンサート。ジャズはジャズでも私たちが普段聞いていてイメージするオーソドックス・ジャズとはちがって、荒井さんたちが手がけているのはコンテンポラリー・ジャズ(現代ジャズ(?))。荒井さんの肩書きはヴォーカリストではなく、ヴォイス・プレイヤー。ヴォイス・プレイヤーなんて耳慣れないが、荒井さんの歌声を聞くと、歌っているというよりもむしろ、まさに、声を使って演奏している、声を楽器としている、という表現が確かにしっくりくる。
 スタンダードの曲であっても、次第に本来のメロディラインから逸脱していって、解釈と表現がフリーに展開していく。だから、彼らのライブ・サウンドは、普段の音楽を楽しむモードではとてもついて行けない。メロディラインをなぞるようなものとは違うし、そのメロディに乗ったり、酔いしれたり、癒されたり、そんな容易いものではない。メロディラインの路線で聞き出すと、そこに還元されない音に難解になり、引いてしまう。
 荒井さんたちが創り出しているライブ・サウンド・ステージは、譜面やコードネームの音に守られた(縛られた)メロディの世界ではなくて、自由で純粋な音と音の世界。それらの音と音の遭遇の場面に立ち会って、その衝撃に圧倒されて息を飲む、とでもいったらいいのか。
 そんなアバンギャルドな演奏にコンサート会場のデイホールは独特な張り詰めた空気が漂った。私は後ろの方で立って聞いていたのだが、場の雰囲気に涙が出てきてしまって、うずくまるハメになり、その姿に気づいたお客さんに、席を譲られてしまった。
 フリー展開は、楽じゃないはず。時折、それぞれの音で不協和も起こしながら、でも同時にそこに登場している時のあの感じ。それぞれの内面から出た生の声、音で対決しながら、結果として共鳴していく。普段慣れ親しんでいる音楽というものからかけ離れているのに、でもどこか近い感じがする音楽。グループホームの同僚のHさんも「(普通に聴いていて)2曲目で、ダメだと思った。でもハッとなって。そうだ、これは魂と魂の掛け合いだっ!て気づいた・・・」と言う。そのコメントに「そう!そう!」と同感する。
 自分たちが、普段、銀河の里で目の当たりにしていること、出会っていること、そうしたものに、荒井さんたちの音楽は本質的に近いのかもしれない。難解だし、言葉で説明しがたく、一般には受け入れがたさもある。でもその中心にうごめいている魂があって・・・。
  馴染みやすさや調和に照準を合わせていくことは、容易い。でもうごめいているものを抱えながらでは、結局は独創的な道を歩んでいくしかない。そしてそれを孤高で孤立したものにしてしまわないで、周囲にも浸透させていくこと、つながっていくことは、とても大変な道のりなんだろう・・・。なんて、人ごとのように言っているが、里も同じ苦悩を背負っている。音楽と福祉と世界は違うものの、思いがけない同志??との出会いに、自分たちの歩みを、また違った視点から確かめて、励まされたような気がした。こじつけ?!いやいや、きっとそう・・・。これからも荒井さんたちの音楽を追ってみたいと思う。
 

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