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今年の稲刈り【2008.10】

グループホーム第1 西川 光子
 

 9月20日、前日まで肌寒い日々が続き心配したが当日は絶好の稲刈り日和となった。 去年、3時間も稲刈りにつきあった、良子さん(仮名)とミヤさん(仮名)の今年の稲刈りに私は密かに注目していた。 稲刈り前日の良子さん「ごめんなさい。今日寝てたいの」と1日中、寝間着で過ごす。スタッフは”明日に備えて休養だよね”とヒソヒソ。


 当日は予定通り。バッチリ決めて、「何ってもやるわよ〜」と朝から息を巻いて、着物姿田んぼに向かう。田んぼでも大活躍「これ掛けるのか〜」とはせに行き、「ずいぶん大っきな束だごど。あんまり大っきすぎでこれわがねんだ」とよける。結びの甘いのは「こったなのは掛けでもすぐ落ちでわがねんだ」とよける。しっかり結んであって、束の太さの適当なものだけを手渡す。その差し出すタイミングの良さ!!餅つくときの縁どりも見事だけどここでも絶妙な心配りだった。他者の存在を尊重して進められる”間”の取り方の絶妙。 良子さんの生き方と育ちを感じたのだった。
 一方ミヤさんは朝からベッドでぐっすり寝入っていて、目を覚ます気配など全くない。トイレが近いので起きてくるだろうと待っていたが、トイレにも起きない。致し方なく、気持ちよさそうに寝ているところ申し訳ないと思いつつ「 ミヤさ〜ん、久しぶりだから逢いたくて来たよ〜」とバカデカイ声で話しかけた。眠くて片目しか開けられないミヤさん。だが片目のまま「あや〜そうが〜おもしれ〜ハハ・・・」と言ってくれる、”よし、ヤッター行けるぞ”とあの手この手で起こしてついに車に乗り込んだ。
 田んぼに着くとメメちゃん(子守している人形)に「ありゃ〜いっぺいだよ。めるが、それ」と見えるように向きを変え語りかける。「日にとされるからここでいい」と車の中で一人過ごす。それでも気持ちは働いていて、その場にすっかり入っているのがよく伝わってくる。 こういう参加の仕方、時間の過ごし方も格別な味があり、 ミヤさんらしい居かたなのだ。
 かき氷の機械も田んぼにやってきて、作業の合間にかき氷が出た。コメさん(仮名)、カツコさん(仮名)、ハナさん(仮名)、車いすの3人も、かき氷をいただいた。氷を見てア〜ンと口を開けたが、口に入ってから”!!しゃっこい!!”と顔全部をしかめるサナさん。でもスプーンが来ると、又大きく口を開ける。氷を食べながらもサナさんの目はジィーと稲刈り作業を見守っていた。
 カツコさんは「ほ〜ほ〜」と氷を口に入れる。冷たいという仕草はなく、ペロペロ何口もいける。働いている気持ちになっているから、喉も渇くのだと感じた。
 稲を5〜6本手にしてにっこにこの表情をしているコメさん。気がついたらしっかり膝の上でモミを手こきし、服がモミだらけ・・・。モミだらけでもかまわず、 コメさんはかき氷をスプーンで平らげた。5月に足を骨折し手術したのだが、今は歩く勢いで、田んぼにやってくることができた。


 今年も暮らしの中でそれぞれが生きて行っていると感じられる稲刈りのひとときを秋晴れの中過ごしたのだった。
 



 

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