トップページ > あまのがわ通信 > 今年の花巻祭り


今年の花巻祭り【2008.10】

グループホーム第2 板垣 由紀子
 

 花巻祭りには、私が新人だった頃は、お弁当を作り、2〜3人で見物に出かけていた。そのうち夜、予約席を取ってグループホーム合同で、スタッフも総出で賑やかに出かけるようになった。私は、どちらかというと、お祭りにはまるよりも、歩いて行ってしまう方と過ごし、縁の下の力持ち的に参加してきた。
 今年は担当ということで、どんな出かけ方をするか、誰とどう過ごすか、過ごせるか?銀河の里という枠、守りから外に出て行くときの覚悟や、外で浮かないようにするには・・・と頭を巡らす。
 今年は、みんなで出たい気持ちが強かった。考えなければならない状況は山ほどある。車いすが必要な人が入居者の半数を超える今、その移動は?どうする。花巻祭り、コラさん(仮名)の目には届くだろうか?サチさん(仮名)はドライブは好きだけど・・・うるさいところは嫌い・・・、怒り出さないだろうか?
 久子さん(仮名)は出かける車に乗ってくれるだろうか? 守さん(仮名)に、ハルエさん(仮名)に、トモミさん(仮名)、いつもグループホームにど〜んと居て支えてくれる人たち、自分で外に歩いて出ることのなくなった人たちと華やかなお祭りを楽しみたい。去年は、「夜なら行かない」と留守番をしたコラさんに合わせ、昼間に出かけることにした。お煮染めに赤飯は祭りにつきものと、よーし作って持って行こう。どんどん乗ってきて、ワクワクしてくる。そんなときはマイナスな状況も、“どんと来い”って気になる。 例のごとく行くの行かないのとやりながらも、全員車に乗り込み、いざ祭りへ。お囃子が聞こえて、山車が通る。「何たらうるせじゃ!」とお囃子の太鼓の音にサチさん怒鳴りはじめる。やばい展開・・・。「花巻祭りのお囃子だよ。」「ほー、花巻祭りな。」と気を取り直してにっこりするサチさんにほっとする。
 福祉用特別観覧席の一番前ではハルエさんが笑っている。その後ろにサチさん。子供御輿がワッショイワッショイとやってくる。私も合わせて「ワッショイワッショイ」とかけ声をかけるとサチさんも「ワッショイ。ワッショイ。」。おまけに掛け合いのワッショイを、、声色を変えて両方やっているサチさん。すごい。
 何とも言いようのない楽しさをワッショイの波がはこんできてくれる。守さんは始め「何だ〜?」という感じだったが、だんだんワッショイの空気に乗っていく。コラさんにみせようと移動するが「おめさんは見えるところでいがべ、オレ見えなくなった。」と例のごとく嫌み口撃。ありゃ〜そうきたか。それならと一番前の席に移動「ここなら一番見えるでしょう。」作ってきたお煮しめや、お赤飯を広げ祭り気分も盛り上がった。
 楽しい祭りに終わりはつきもの。帰りの準備にかかる。トイレによる人、車いすで移動する人、順調に乗り込む。最後になったコラさんに「そろそろ暗くなってきたし、帰りますか?」「何?」「暗くなるから・・・そろそろ・・・」「来る時はホレホレって連れてくるくせに見てれば帰れってが?」とまた口撃が来る。コラさんが「6時に帰るなら」っていってたんじゃ????って言いたくなるが、もう気持ちは風流山車に釘付け聞く耳なし。「それじゃ、みんな送ったら迎えに来るから、みっちゃんと見てて。」とコラさんは結局さごまで祭りを見てしまった。


 翌日も、祭りでもらった手ぬぐいが無くなった盗まれたと大騒ぎ、結局コラさんの思い違いなのだが、楽しい祭りも「良かったね」で終わらせず、「行かなきゃよかった」になるコラさん。「あんなに楽しんでたじゃない」と気持ちを逆なでされる、そのコラさんが「浦島太郎みてだ。」と笑う。たしかに、祭りは竜宮城かも。変わらずにある日常がありがたいのかもしれない。
 いつもは何秒か前の記憶も忘れるサチさんが、祭りの翌日、「あのね、昨日、はなまき祭りに行っていっぱいごちそうになったよ、人もいっぱいいてにぎやかだったよ。」と語るのでみんなで驚いた。祭りの神秘的な力?エネルギー??例のごとく今年の祭りも実に過激に過ごさせていただけました。感謝です。
 



 

あまのがわ通信一覧に戻る

このページの上部へ


〒025-0013 岩手県花巻市幸田4−116−1
TEL:0198-32-1788 FAX:0198-32-1757
HP:http://www.ginganosato.com/
E-mail:l: