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やるべき業務と起こってくること 【2008.09】

グループホーム第2 板垣 由紀子
 

  グループホームに新人が配属されて、これまでやるべき業務を優先して動いていたのを、自分自身なるべく座って、起こってくることに身を任せるように切り替えてみた。すると置き去りにしてきたいろいろなことが見えてきた。


 食事介助をしながらリビングにいると久子さん(仮名)がテラスに向かうのが見えた。いつもプランターの花に水をあげる久子さん、行って声を掛けたいな、と思った。食事介助を終えてテラスに行くと、「これ見ろ、サルビア枝分かれして、こっちさも咲くどごだ。」と久子さんが話しかけてくる。種から育てきたが、なかなか花を咲かせないサルビアに気をもんできた久子さんと一緒に花をながめていた。
 そこへ真っ黒に日焼けした高橋君が「板垣さん、まだ野菜ありますか?」と声を掛けてくれた。「キュウリと、ナスと、トマトあとで届けます。」と会話を交わす。高橋君は新人スタッフ、挨拶以外で声をかけられたのは始めてだった。


 リビングに戻ると第1グループホームの利用者の武雄さん(仮名)が来ていた。お茶を出し、話を聞いていると、その向こうでハルエさん(仮名)が我々の様子を軟らかい表情で見てくれている。
 武雄さんが帰ったあとハルエさんをクッションチェアーに誘うと、軟らかい表情のまま「すみません」と言ってくれた。「それでいいよ」と言ってくれているようだった。


 

 夕方、あと一時間で食事と言う時間帯、玄関から出て行こうとする豊さん(仮名)にスタッフが声を掛ける。「ちょっとそこまでだ。」と豊さん。そこで私は豊さんと散歩にでることに。そこに高橋君が通りかかり、豊さんは、真っ黒に日焼けして、頭にタオルを巻いた高橋君の腕をガッチリ捕まえて「おめ、おどご(男)だが?」と話しかける。「男ですいません」と高橋君。ジッ〜とながめて「おめおっきいな〜。・・・・俺がちいせのだか。」と笑った。
 そうこうしていると第2グループホームの新人、真白君が草刈につなぎ姿でやってきたので、豊さんも一緒にみんなで裏の畑へ行った。草刈り機を使う若者の姿を目で追いながら、高橋君に「たいしたもんだな、やっぱり機械は早いな。」と話しかけ、草刈りが終ると、「ご苦労さん。」と声をかけていた。「じゃ、あとは夕飯にするっか」「んだな。」と戻るが、ずっと高橋君の手をつかんだままだった。


 やるべき業務優先で動いているだけでは見えないことが、人の動きに沿うことで、いろいろな出合いが起こり、展開していく。「そうだよこの感じ」業務だけでは出会えないなにかが、意図せずともちゃんと起こって繋がってくる。今まで、大事にしてきたもを見失いそうになっていた。業務が土台だが、出会い、起こってくることに、この仕事の生きることに直接通じる醍醐味があるはずなのだ。
 

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