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スパークリングスパーク(その2)【2008.05】

宮澤 健
 

 「障害者支援として全国でもトップクラスの戦略だ。」「この店を続けるべきだ。これは良い店だ。」「戦略のコンセプトはまちがっていない、むしろ時代を先取りしている。」「10年早すぎた。」「行政は応援しないのか」等々店に対する継続を願う声がほとんどだった。障害者自立支援の方向としては街に出て社交のまっただ中で人びとの出会いと交流の場を障害者自らが関与することで運営していこうという挑戦的な取り組みだったはずだ。
 さらに、ライブハウスの要素も取り入れ、毎週末には地元アマチュアバンドのライブと元プロのピアニストと我が銀河の里の支援員米澤のフルートライブが続けられた。中年の男の円熟した魅力を歌とギターで奏でる土曜日、祖父と孫のコンビのようなピアノとフルート、それぞれに怪しい魅力と音楽の力がみなぎっていた。それらが毎週開催されること自体、街にとっても意味があったのではないか。音楽がうるさくて話ができないという声もあったが、話がうるさくて音楽が聴けない時代にあってそれも良いのではなかったか。元々考え方としてボックスでしきられて個別になってしまうのが主流の今、オープンな空間で、音で一体になったり、音で遮断したりするねらいがあった。音楽の中で若い恋人同士が語り合ったり、リクエストで相手を誘い踊る中高年の男女もあった。一昔古いようだが、古き良き時代の再来の可能性も見え隠れしていた。ほのかに暖かいひとのこころ、淡いエロスを障害者の店が掘り起こすことこそ我々の目指す所だった。


 ファイナルを通じてアンケートをいただいたが、120通ばかりの回答を得た。おおむねコンセプトは好意的に受けとめられ理解してもらえていたし、そのコンセプトに対する支援の意志で応援したいという人が大半だった。
 ただ、店にお見えにならない福祉関係者や行政のウラでの意見も早くから耳に入ってきていた。そのなかには「福祉は金儲けではない支えの心だ間違えるな」と言ったものがあった。この地域ではだいたい人をけなすのに金に汚いやつだといえばそれで通る所がある。福祉の大先輩の言葉には一応耳は傾けるべきだと思うが、人が人を支えることは簡単なことではない、それはほとんど不可能なことであることを私は知っているつもりだ。障害者に支えられているのはほとんど支えるべき立場にある援助者側だということも体感してきた。しかも制度は金儲けを我々に強要してきている現実がある。「福祉のこころは金儲けではない」という正しすぎる言葉がいかに高慢でうぬぼれに過ぎないか悪人の私にはよく解る。人はなかなか正しくは生きられない。正しく生きている人もいるがその周囲の人は大変だろう。正しいかどうかはほとんど生きることには関係なくて、新しい理論とその挑戦こそが、生きることそのものに直結していると私は考えたい。強いものが生き残るのではない、変化に対応できるものが生き残るのだと誰かが言っていた。確かに生命の進化もその通りだ。
 我々の挑戦は経営的には失敗したかも知れない。しかし「やめるな応援するから」といった声を多くいただいた。ありがたい事だ。挑戦は大きな成果をもたらし意味もあったと思う。「なにもしないやつを信用できない、おまえらはやって見せたんだ」と言ってくれた人もいた。多くの方に支えていただき、多くの出会いをもらった一年だった。(続く)
 

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